酔い本音
しとしとと降り続ける雨を、どこかのぼんやりした光が照らす。
日差し避けの屋根は今は雨避けの軒となり、縁側にはチューハイや日本酒の缶とビンがずらりと並べられ、ドロロとクルルは2人きりで酒盛りをしていた。
元々、ケロロが「久しぶりに小隊皆で宴会をするであります!」と脈絡無く言い出したのがキッカケで、ついさっきまでケロロの部屋ではどんちゃん騒ぎが行われていたのである。
モアは、お酒を飲むと手に負えない酔っ払いになるためにお酌をする方にまわっていて、ケロロがモアにお酒を注いで貰っている光景を見たタママが嫉妬し、暴れたときにバッシャーン!とすっとんだお酒をものの見事に引っ被ったギロロが気絶。
まあ、そんなベタなコントのようなシーンを眺めつつ、各自のペースでちびちびと飲んでいたクルルと珍しく忘れられなかったドロロは、そのままドロロたちの家で、こうして酒をあおっている。
月ではなく、星でもなく。雨を肴に飲む酒は、これはこれで悪くは無い。
しかし、程好いほてりを感じつつも、クルルは少々現状を『つまらない』と不満に思っていた。
「クルル君、大丈夫?」
「――ああ」
「でも、顔が少し赤いよ……?もうそろそろ……」
そう言って酒を片付けようとするドロロを制し、クルルは「ん!」と手近にあった日本酒のビンを突きつける。そして、そのまま傾けられるビンの口に、ドロロは慌てて少しコップを傾け、それを受ける。随分荒っぽいお酌だ。
そして、少し困ったように眉を下げつつ、じとりと『観察』される前で、素直に何杯目か分からない盃をあおる。1口1口、しっかりとかみ締めるように飲み干していくドロロの様子は、いつもと変わらない。
(……つまんねぇ~……)
顔色さえ変わらないのだから、やってられない。
(全然酔わねぇ~よなぁ)
クルルは今まで、ドロロが酩酊したところを見たことが無い。そして、それがどうにも気に食わないのだ。
アサシンとして訓練を受けているドロロが、薬物やアルコールに対する耐性を持っていることは、クルルも知っている。それでも毎回――こうして酒を飲む度に、自分の方が先に酔ってしまうのが、面白くない。
(ドロロ先輩が酔っ払ったら、どーなるのかねぇ……?)
そんな好奇心9割と、妙な悔しさ1割。
わざとアルコール度数の高い酒を注いでいくが、あくまでけろりとしたまま、ゆっくりとコップを空にしてしまう相手に、半ば意地になっていく。
とうとう2人の間のお酒が無くなった頃、酒に強いはずのクルルは、肌寒さなどものともせずに、こてんと寝転がってしまった――。
アルコールが回って眠ってしまったクルルは、小さく丸まっていて、微かに呼吸を繰り返す。警戒を解く者の傍では、こうして寝てしまうと滅多に目を覚まさないのだ。おまけに今回は、少しずつとはいえ、相当な量のアルコールを摂取したのだから、もしかしたら明日の昼頃まで起きないかもしれない。
(……でも、最近はあまり眠れなかったみたいだし……)
とりあえず、そっと軽すぎる少女を抱き上げて家に入る。
酒であたためられたクルルの体温は、まるで子どものようだ。しかし、血色がよくなった肌は、年少のものには無いであろう、艶のようなものが浮かんでいる。
クルルは、悪酔いをしない。
酔いが回ると眠気が強くなるらしく、深く深く意識を沈め、簡単には目を覚まさない。そうなるまでにはかなりの酒の量が必要になるようだが、地球に来る前には、何度かそういう状態になったことがあった。
半分、睡眠薬の代わりにもしていたらしい。
そんなことを思いながら、すでに敷いてあった布団にそっと少女を下ろす。すると、離れていくドロロの熱を逃がすまいと、赤味の差した手がドロロの服の裾をきゅっと握り締めた。無意識の行動だが――だからでこそ、妙に嬉しくなってしまう……。
「……おやすみ」
長い、長い、秋の夜。
今日は『おあずけ』となった触れ合いの隙間を埋めるように、そっと、眠るクルルの紙を一房掬い、口付ける。
「いい夢を……」
酔いに任せて、衝動的に、ということは、出来ない。そんなドロロに飲まれたお酒は、たった1度のキスのための勇気になった。
《終わり》
お酒のよさは、いろいろ。
ひっそりと、『闇風』雪無様への2000hit達成記念という(あまりにもずうずうしい)捧げ物……。
もしよろしければ、貰ってくださると幸いです。
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