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夢人紙飛行機

 久しぶりに学校へ行って、午前中で早退。

 晴れ渡った空には雲1つ無くて、授業をしていた先生自身が『こんな日に教室で授業なんて、やってられないよなぁ』などと言うくらいの晴天だ。

 2限目の古文で返却された小テストや、学校に行ってなかった間に溜まっていたプリントを詰め込んだ通学カバンは、さっきから歯軋りのような音を立てている。

 ぎしぎし、ぎしぎし……と。

(壊れそうな音、ってヤツ?)

 まあ、通学カバンというものはかなり丈夫に作られているものだから、まだ大丈夫だろう。しかし、紙というのは存外重い。天気が良いからと、バイクではなく徒歩で学校に行ったことが、少し悔やまれた。

 家に持ち帰ったところで、この紙は皆、資源回収に回されることになるのだろう。

(――あ……そういえば今週、資源回収は休みだったっけ?)

 一昨日、アパートのポストにそんなお知らせの紙が入っていた気がする。そこで、ピタリと道の真ん中で足を止めた。

(だとすると、今度の回収日は再来週かぁ)

 隔週で設けられている回収が1回休みとなると、丸々1ヶ月分の『資源』が部屋に溜まる。

(紙の山に囲まれて生活ねぇ~……)

 これから持ち帰る予定のプリントやテストに囲まれて、生活をする自分――想像してみると、なかなかシュールだ。

 生憎、自分は元々環境を守るために――という理由で資源回収に紙やプラスチックを出す訳ではない。単に回収日が異なるだけなのだから、ゴミの日に出そうと資源回収日に出そうと結果は変わらないから、というだけのことだ。

 地球を守るため、など、冗談でしか言わないだろう。

 偶に、某宇宙人たちの企みに茶々を入れるのは、自分が楽しいから。大義名分じみた台詞を口にすることはあるが、それは全て軽口に過ぎない。

 そう考えていくと、ずしりと手に食い込む重さの紙をアパートまで持って帰る気持ちが、急速にしぼんでいった。

 空をもう一度見上げれば、やはり青い。

(――――あ、そうだ)

 

「妙なメール、送ってくんじゃねぇ~よ」

「まあまあ、暇つぶしにはいいでしょ?」

「どーだか」

 ちなみに現在地は、日向家の屋根の上だったりする。メールを送った1分後、クルルはソーラーボードを使って屋根の上に来てくれたのだ。

 取りあえず、こうして誘いに応じてくれた事実にお礼を言えば、ニヤリと嗤い返される。

「高つくぜぇ?」

「お望みとあらば、カレーのフルコースをご用意させていただきますよ?姫君」

 にっこりと笑ってそう切り返せば、独特の笑い声と共にOKが出た。

「で?」

「うん?」

「いくつ作るつもりだぁ」

「う~ん……取りあえず、コレだけ全部?」

 指し示す先には、カバン一杯に詰め込んだ例の紙。その内1枚を引き出して、我ながら器用に折って開いて折って、と形を変えていく。

 クルルにも1枚渡すと、皮肉交じりで彼女が嗤う。

「配布物かよ」

「リサイクルだよ、リサイクル♪」

「クックッ……しかも、今時手書きとはなぁ」

「あー、それ社会科のやつ?何か、その人コンピュータと相性が悪いらしいよ」

 定年間近の老教師は、時代の波に取り残されたように未だプリントもテストも手書きで作っている。クルルは喉を鳴らしながら、その紙をやはり器用に折っていく。

 そうこう話す内に、1つ目の紙飛行機が完成した。

「まずは、1個目」

 微かに風が吹いた時、そっと手を離す。

 紙で出来た翼は風を掴み隣家の方へ向かっていったが、残念ながら途中で風が止んでしまい、日向家の塀辺りに墜落した。

(後で回収するってことで)

 再び、カバンからプリントを引っ張り出して2個目を折り始める。そして、こちらが2個目の紙飛行機を折り始めたときに、クルルの紙飛行機が飛んだ。

 それは小雪ちゃんとドロロの家の庭まで飛んで、屋根に当たって地に堕ちた。

「あー、負けた!」

「ククッ……ガキ」

「次はわかんないじゃん?――――そういえば、今日はやけに静かだね」

 いつもなら賑やかなハズの日向家から、声が聞こえない。今更そんなことに気付いて尋ねると、クルルは端的に答えを寄越した。

 何でも、他の面々は遊園地に出掛け、クルルは興味が無いので留守番をすることにしたらしい。聞けば、彼等は今日の夜まで帰って来ないという。

「……ねえ、クルル」

「あ?」

「今日、アパートに泊まりに来ない?」

「――――――何で?」

 今の間が、可愛いな、とか。

 モチロンそんなことをうっかり口にしてしまったら、誘いを受けてもらえなくなるだろう。

(だから、我慢我慢)

 努めて笑顔で、そのまま言葉を続ける。

「約束のカレー、ごちそうしたいから」

「……」

「それに、さ」

 ――お互い、ひとりだし。

「寂しいから、傍にいて欲しいなぁ~って」

「……」

「OK?」

「………………しょ~がねぇ、からな」

「――サンキュ」

 そこで、自然と止まっていた手の動きを再開する。

 ただの長方形だった紙が、空中を飛ぶための形に変わっていくことは、昔から好きだった。いつの間にか、隣に座る彼女も2つ目に取り掛かっている。

「あのさ」

「?」

「明日まで、ゆっくりしていってね」

 せっかくだから――――。

 そう続けた言葉に、今度こそ彼女は可笑しそうに嗤った。

(だって、ねえ?)

 ケロロもギロロもドロロもタママも、居ない。

 彼等に対して、一応心の中で『ゴメンね』と謝っておこう。届くことの無い言葉は、頼りない紙飛行機にのって、ゆるやかに地面へ落ちていった。

 

 《終わり》

空を飛んでいると、人は言うんだね――――。

 

この小説は、『有限と微小のパン』HAL様にこっそりと……40000hitおめでとうございました、という……。キリリク小説への釣りあわない感謝小説です!(言い切った)

それでは!!(やはり言い逃げ)

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ケロロ軍曹2」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。失礼します。
HALです。

二人共、可愛すぎるのですが…。
日向家の屋根で紙飛行機をする電波(悶)
カレーのフルコース。どんなのなんでしょう?
ライスと一緒にナンとか?
そして、何気に泊まりに誘う睦実くん。そんなにクルルに泊まりに来て欲しかったのか(笑)

GWに転がり込んだ友人宅で携帯で読んでいて、思わず絶叫したのはわたしですw


電波を有難うございました!
…あと、あの…これ、どうしたら…もらっちゃって良いのでしょうか?
ダメなら言ったって下さい(汗)


では、失礼します。

投稿: HAL | 2009年5月 4日 (月) 22時11分

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