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2010年1月 4日 (月)

『カフェイン中毒者』HAL様から頂いた素敵なお話

【Christmas for you】

雪が降るには少し早い──。

気温が一気に下がり、雪雲が空を覆う日。
送信したメールを確認したのか。パチン──と、閉じられた相手の携帯電話には、ストラップと渦巻きをした付け根が揺れる。
街はクリスマス一色とでも言う様に、店先のディスプレイや、サンタの格好をした客引きが目立つ。心なしか、カップルが眸に入るのは、気のせいでは無い。
隣に歩く金に近い長い髪の少女は、不機嫌そうに歩を進めていた。
赤髪のギロロは、そっと小さく溜め息を吐く。
籠りがちな少女を外に出そうと、ラボへ足を向けたのは三十分前。
恒例に、少女の親友が髪で遊んでいた所へ出くわした。髪の長い少女は、良く親友が髪を結っている。本日は、緩くウェーブを掛け、サイドをピンで止めたもの。ピンには小さな鎖があり、その先には少女の階級章。余談だが、それは親友の手作りらしい。
「なんか用かィ?」
仏頂面と言うのだろう。そんな不機嫌な表情に、笑いを堪えつつ口にした。
「買い物に付き合って欲しい」
少女の親友にも声を掛けたのだが、生憎にも用事があったらしく。奇しくも、二人で出掛ける事になった。
二人の格好は、至ってシンプル。
ギロロは、ジーンズにブーツ。黒のジャケットと中のインナーは、グレイのネックシャツ。
少女──クルルの出で立ちは、こちらもジーンズにショートブーツ。黒のインナーに、白のニットセーター。ハーフコートを羽織っている。
「で?」
「何がだ?」
「何がって…アンタ。買い物って、何を買うんだ?」
「…プレゼント」
「は?」
「夏美に渡すクリスマスプレゼントだ」
「あぁ、成る程…」
駅前にあるショッピングモールは、チカチカと眸には優しくないが、クリスマスらしい装飾。
一番無難なのは、ディスカウントショップ。安く買うなら、アウトレットでも良いかも知れない。
「…けど、何で俺なんだ?」
「気にするな」
「おい!」
引き摺られるが如く、店の中へと入って行った。

今の状況は、クルルにとって面白くは無い。なぜなら、主導権が相手にあるからだ。
夏美へのプレゼントを選ぶのは、この際良いとする。問題は、自分も何かプレゼントを選べと言うのだ。
「別に俺は関係無いだろ…」
「地下とは言え、お前も日向家に住んでいるんだ。何か上げても、おかしくは無い」
「いや、そうじゃなくて」
「なら、何だ?」
「…もういい」
少女は溜め息を吐きながら、商品が並べられている棚へ眸を移す。
残された戦士は疑問符を散らすが、問い質した所で、まともな返事が返る確率は低い事を知っている。この状態なら、変に訊くよりも流す方が利口なのだ。
商品は、クリスマスにありがちなものから、日常品まで揃っている。
一つ見て、別の物に視線をやると、どちらが良いか悩むのだ。
決断力の問題ではなく、この場合は嗜好の違いに近いかもしれない。
「無難に行くか…」
「だからって、ハンカチとか言うなよ?」
「駄目なのか?」
ギロロの返答に、些かクルルの頭痛がじわりと滲む。
溜め息の一つでも、盛大に吐きたい気分だ。
「…まぁ、武器をやらないだけましだが、ハンカチ一枚って言うのもどうよ?」
「しかしな…」
「夏美は、普通に女だぜェ?それこそ、単純に女が好きそうな物を選べば良いだろ?」
科学者の言い分も、最もである。
存外鈍い造りである戦士の頭たが、単純に女性が喜ぶ物には心当たりがあった。
「甘いもの…」
「ク?」
「焼き芋とかか?」
「それは、アンタがいつも上げてるだろ…そうじゃねェよ」
「なら…」
並べられた商品棚の前で、あれこれと思案する二人。
本人たちに自覚が無い為に気付いてはいないが、端から見れば目立っている。
背が高く精悍な顔立ちなギロロと、身長は高くもなく低くもなく。平均的だが、金に近い髪色で色白なクルル。顔は美人の部類に入るだろう。
そんな二人が、一緒にいるだけでも人目を引く。だが、前述した様に、本人たちは気にしない。
「アクセサリーか?」
「その辺じゃねェの?」
「お前は、どうするんだ?」
「これ」
見せられたのは、バスセット。
風呂が好きな夏美には、丁度良いかもしれない。
アロマオイルや入浴剤がセットになっており、フェイスタオルもついている。
「…違い過ぎないか?」
「俺とオッサンは、性別が違ェだろ…。女と同じものを男が贈ってどうする…」
「そんなものか?」
「一般と呼ばれるカテゴリーでは、そうだなァ」
男と女では、贈る内容が違うのは当然かもしれない。
それなら、今。ギロロと共にいる少女は、何をもらい何を相手に渡すのか。
男性気質とは言え、結局は女性であるクルルは、相手に何を渡すのだろう。
「クルル」
「あ?」
「…その…あいつには、何か贈るのか?」
「ク?…!──べ、別に…何でも良いだろ」
先に行くから──と、耳を真っ赤にしながら会計に向かう少女に、戦士は複雑な感情になった。
妹の様な少女。自分よりも小さいからか、子供に見てしまいがちだが。少女は、立派に女性である。
「…好きなヤツも出来て当然だろうな」
それでも、その相手が彼である事は、どうにも受け入れ難い事実なのだが。

当日。
日向家でのクリスマスパーティーは、盛り上がった。
プレゼントは、渡したい相手に渡す事にしたので、各々が目的の相手に渡る。
「うわ!ギロロ、いいの?」
「あぁ…」
「有難う!」
一番多くもらっていたのは夏美だったが、それは必然なのだろうか。
細い鎖に、小さく星を散らしたブレスレットは、彼女の手首に良く似合った。
「夏美ィ~」
「クルル?」
「ククッ。感謝しろよ?先輩、それ選ぶ前に焼き芋にしようとしてたからなァ~」
「へ?」
「バッ!ク、クルル!お前!」
喚き出すギロロを他所に、クルルは夏美の手に、可愛らしくラッピングされた物を落とす。
「バスセット!」
「クックッ」
「有難う!クルル!」
「クヒっ!」
抱き付かれた拍子に、少しだけ体がぐらつく。
早速、一緒に入ろうと誘う夏美に、科学者は必死に拒否をする。
一連の動きを見ていた戦士に、微かに近付いた気配。
「クルルが言ってた事って、本当だったんだ」
「睦実か…ん?」
「どうかした?」
「いや、何でも無い」
睦実のジーンズのポケットに入った、携帯電話。
それに飾られたストラップに、少女と同じ渦巻きの付け根が揺れていた。

今日くらいは聖夜に免じて──。

~fin~

戦士。少女と買い物へ。

 

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『カフェイン中毒者』HAL様が開催された素敵なクリスマス企画にこっそり参加させていただき、その上ちゃっかりいただいてきてしまいました!(欲望に忠実な人間)

クリスマスプレゼントを選ぶギロロとクルルが……お揃いの付け根をつけている睦実くんとクルルが……何より、何だかんだで夏美ちゃんにバスセットをプレゼントするクルルと、クルルに抱き付く夏美ちゃんが可愛らしすぎて……!!(←『触るな危険』)

HAL様、素敵なクリスマスプレゼントを本当にありがとうございました!!

 

以下、こっそりと小話をひとつ……。

 

『溢れるくらいでいいんだよ、幸せってやつは』

 

クリスマスというのは、なかなか上手く出来た行事だと思う。

「よかったでありますな、モア殿」

「――はい!」

表裏のない満面の笑顔。クルルからのクリスマスプレゼントを大事そうに抱えて笑うモア殿を見ていると、こっちまでほっこりとした気持ちになれる。

クルルがモア殿に選んだクリスマスプレゼントは、夏美殿へのプレゼントとは色違いのバスセットだった。

ミニタオルとかは単純に『色違い』なんだろうけど、バスビーズとかは香りも多分違う。

モア殿のバスセットは、黄緑色に揃えられているから、多分ミント辺り。夏美殿のはさしずめ、柑橘系の香りだろうか?

(……平和でありますなぁ~……)

タママは、ケーキとかごちそうを頬張っている。

ギロロは、夏美殿にちゃんとプレゼントを渡した。ヘタレにしてはまあ合格だろう。

(クルルをたまには外に連れ出す――とか何とか言ってたけど、結果的にはギロロがクルルに助けられたでありますなぁ。ま、そんなことだろうと思ったケド)

クルルは、夏美殿からの誘いを全力で断っている。

ついさっきモア殿と一緒に風呂に入る約束をしてたみたいだから、多分それも関係しているんだろう。妙なこだわりというか、クルルにとっては譲れないところがあるらしい。

自分が面白そうだと判断した頼みは無尽蔵に引き受けても、気乗りしない頼みは受けたくないという気持ちは分かる。そしてクルルの場合、後者を引き受けることは『負ける』ことと同義だという。

そこが、我輩にはちょっち不思議だ。

(……勝ち負けの問題じゃ無いよ~な気がするんでありますがねぇ……)

「おじさま?」

「ん?何でありますか?」

「……あの、」

「?」

「おじさまからいただいたこの子も、大切にします!てゆーか、後生大事?」

そう言って、バスセットと一緒に抱いていた白熊の抱き枕をぎゅ、と抱き締める。

モア殿への、我輩からのクリスマスプレゼント。改めて選ぼうとすると結構悩んで、実は丸3日悩んだ末に決まったモノだったりする。――まあ、そこは内緒。

「喜んで貰えて何よりであります」

「……その、もしよろしければ、おじさまにこの子の名前を決めていただきたいんです!」

「ゲロ?」

「おじさまからいただいた子ですから……」

これは、正直予想外の出来事だ。

「……これは、責任重大でありますなぁ~……」

「はい!てゆーか、期待絶大?」

「じゃあ、いい名前が思いついたらモア殿に知らせるであります」

「……はいっ!楽しみにしてますね?」

「ゲ~ロゲロ!任せるであります!」

そこで、一旦モア殿もクルルたちのところへ駆けて行った。

女の子たちが集まると、やっぱり華やかだと思う。軍は男が多かったからなおさらかもしれない。

(何の話をしてるんでありますかね~?)

バスセットのことだろうか?

それとも、それぞれのパートナー同士のプレゼントのことだろうか?

他愛も無いほんの少しの非日常で、笑う。ここは、やっぱり平和なところだ。

(…………あー、何か我輩、案外繊細かも……)

ガラにも無く、祈ってみたくなる。

――――どうか、少しでもこの時間が、長く続きますように……と。

 

《終わり》

永遠なんて言わないから、どうか…

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