家庭教師ヒットマンリボーン

甘くない日

「―――何、この題名……」

「……さあ?」

「何より、僕が出てくる小説がようやくアップされたのが、こんなものなんて、どういうつもりなの?」

「……本、出したしね、この作者…(自分の力量と不釣合い…)」

「言い訳?」

「――事実」

「だいたい、会話だけってどういうこと?地の文が1つも無いんだけど?」

「―――いろんなサイトでやってるから、やってみたかったらしいよ……?」

「―――群れている連中は、咬み殺す」

「……」

「……まあ、それはいつでもできるしね。とりあえず、嫌がらせくらいにしておくよ」

「……?」

「『甘くない日』なんでしょ?今日」

「……」

「『甘く』なれば、いいんだよね。取りあえずは」

「……っ!?」

甘い、日へ。

Prost!(乾杯!)

 《終わり》

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からかうような口付けを

「おやすみなさい千種」

 ゆっくりと額に唇が触れる。

 抵抗も恥じらいも無いようだが、この行為の意味も意図も分からずに、ある日首をかしげていた。

 愛されたことを忘れた子どもばかりの寄せ集めは、深くキスの意味も知らなかった。

 ある程度の知識はあっても、それは硝子のコップのようなもので、水やお茶などの中身・液体にあたる、経験や実感を伴っていなかった。

(幼い、かわいらしい千種)

 骸自身、その気持ちはそういった庇護欲のようなものからの行為で、深い意味などは無かった。

 自分や犬とは違い、生身で戦う術のない千種は、ある意味彼らにとっては、守るべき対象だった。

 無力さを愛おしいと思える世界を知らず知らずのうちに求めていたのかもしれない。

 崩れていくのは、いつもあっという間だった。

 見たことの無いヘッジフォッグを手に、千種は血だらけだった。

 返り血と、千種の血。

(―――千種の血に、混じるなんて…)

 骸と犬は、その惨状を呆然と見ていた。

 目を逸らさないだけでも、苦痛だった。

 千種が、戦う術の無い状況を疎んでいることは、わかっていた。

 ―――それでも。

 彼らが育んだ気持ち…願い…は、こんなにも唐突にあっけなく壊されてしまったのだ。

「―――千種」

 呼べば、いつものように振り返る。

 その瞳に動揺を見ることはできなかったが、ただ一瞬、その目が伏せるように下を見たことを、骸は見逃さなかった。

「大丈夫、ですか?」

「はい」

 壊れた、もの。

 それは、二度と戻らない上に、風に舞うほど粉々に潰されてしまったことを知る。

 彼らは、共にいた。

 それは、独りではなくなったということ。

 けれど、それぞれの孤独は、確かに残った。

 骸の中で、何かがこわれた。

 弱さを許さなかった世界。

 たった一つ、ようやく見つけた大切なものを、こうもたやすく奪っていった世界に。

 そして、自分に。

(―――すべて壊してしまおう。…残らないくらいに)

「おやすみなさい、千種」

 口付けをするときだけ、骸は幻想を思う。

 もしも、今この存在が、武器を持っていなかったら?

 こうして、共にいられたのか…と。

 ――答えはノー。

(この世界に、そんな楽園は存在しない……)

 それでも。

 ―――それでも。

 あの、血に濡れた千種の姿を思う度。

 違う未来――『今』を、願わずにはいられない。

 庇護欲は、少しだけ残っている。

 けれど、それはやがて少しずつ…少しずつそれは、姿を変え始めた。

「千種、キスしてください」

 それは、おやすみといい、いつものようにキスをした直後のことだった。

 千種は驚いて、瞬きを繰り返す。

「いやですか?」

 しかし、そういって千種が断らないことを骸は確信していた。

 やがて瞬きは少なくなり、千種はそっと体を浮かせた。

 骸のように、その額に。

 骸とは違い、ほんの、わからないほどの短い触れ合い。

(―――幼い、ですね…)

「―――――骸、様?」

 誰も教えてくれなかった。

 だから、彼らは自分で知るしかなかった。

 幼いまま、彼らは生きて。

 からかうような口付けを、交わすだけで―――。

   《終わり》

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