ケロロ軍曹コラボレーション

シュークリーム〈前編〉

 ハロケロもついに最終日となります。  

 今回は、川谷がケロロ、ギロロ、ドロロの幼馴染組で前編を。そして、悠氏が『こどもの箱庭明け方の宙』でクルル、タママの後編をアップしていますので、併せて読んでいただければ幸いです!

 彼らの賑やかな時間をどうか最後まで見守ってください―――。

 

 10月31日。

 ケロン軍本部の1室で、何やらごそごそと動く3人は、それぞれが大きな袋を2つずつ持っている。ついでに説明を加えると、3人の格好――もとい着用している服は軍規定の隊服ではなく、普段着でもない。

 3人しかいない室内という密室のため大丈夫なものの、もし事情を知らない人がと通るような場所だったら、相当びびるような3人組だ。

「そういや、2人は何を準備したんでありますか~?」

 水色模様の袋の口にリボンを結んだソレを持つケロロは、頭の横にかぼちゃのお面、そして黒地に黄色と白色の星を散りばめたポンチョを着ている。

 そんなケロロの問い掛けに、体の目立つところに包帯を巻き、シルバーアクセサリーでアクセントを付けたミイラ男のギロロは、溜息を吐いたものの、一応、

「――――飴だ……」

と律儀に答えた。茶色の飾り気の無い紙袋がいかにもこの男らしくて、それがケロロの笑いを誘う。

「ゼロロは?」

「僕は、カップケーキだよ」

 こちらは、裏地は赤色、表は黒色のマント。その下にはフリルの付いたワイシャツに黒いズボンをはいて、ワインレッドのネクタイを締めている。そしてよく見ると、口の中にはおもちゃの牙が2本、手首には逆十字架のついたブレスレットがかかっていた。その手に持つ、というより、両腕で大切に抱えているのは、ストライプ柄の紙袋に、凝ったシールで封をしたもの2つ。

 2人のそれぞれの答えに満足したように、ケロロは、「よしよし、よくやったであります2人共!」と、何だか偉そうだ。

「そういう貴様はどうなんだ?」

「よくぞ訊いてくれたであります!!我輩は、何と今回、ブルーベリータルトに挑戦したんでありますよ!」

 ババーン!と、得意げに袋を掲げるケロロに対して、ゼロロは困ったように苦笑し、ギロロはあからさまに眉を顰めた。『挑戦』よりむしろ、堅実なものを作った方が良かった――むしろ、買った方が良かったのではないか?ということを口にすることは、流石にしなかったけれど。

「で、後は皆で食べるシュークリームが出来ればバッチリでありますな。どれどれ……」

「おい、途中で開けるな」

「え~!」

「ケロロ君。途中であけると、皮がしぼんじゃうよ」

「ぶぅー……しょーがないでありますなぁ……」

 しぶしぶ引き下がるケロロに、クリームの泡立てをするよう指示を出すギロロ。こう見えて、相当器用なギロロ指導の下、シュークリームはどんどん完成に近付いていた。

 カスタードクリームを作っているゼロロは、手を動かしたまま、今回の始まりを思い出す。

『10月31日は、ケロロ小隊ハロウィンパーティを開催するであります!!』

(いきなりだったから、驚いたけど……)

 皆で仮装をして、年下組の2人に、幼馴染トリオがお菓子を渡した後、皆でお菓子を食べたりジュースを飲んで、騒いで……。そんな、他愛も無い楽しみを生み出せるところがケロロのすごい所だと、ひそかにゼロロは思っていた。

 つきさっき、ケロロから初めて話を聞かされ、仮装の衣装を手渡されたタママとクルルは、今、別室で待機中である。ケロロがどんな服を用意したのかゼロロもギロロも知らないため、2人がどんな姿になるのか、ドキドキしているのだ。

(……喜んで、くれるといいなぁ……)

 コッソリと、お菓子の他に用意したプレゼント。小さなかぼちゃをくりぬいて作ったランタンを、あの想い人はどんな風に受け取ってくれるだろうか?

 そこで、「こげるぞ!?」とギロロに言われ、慌てて火を止めたゼロロ。間一髪で無事だったカスタードクリームを前に安堵する青い幼馴染を笑っていたケロロが、(いっそ、クルルにイタズラされてしまえばいいのに……)などと思っていたことは、ケロロしか知らない――。

 

 《to be continue…》

サプライズパーティーは、ささやかに、盛大に!

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プリン〈後編〉

 ハロケロも5日目で、本日はギロロ、タママ、ドロロでお送りいたします!

 相方の悠氏が『こどもの箱庭明け方の宙』にて、ケロロとクルルの前編をアップしているので、是非そちらと併せてお読みいただければ幸いです!

 それでは……。

 

 どんでろでろでろでろどろ~ん……。

 【注釈――これは、ドロロの落ち込んでいるという効果音ではありません】

 どろどろしい、妙なオーラを纏ってテーブルの上に置かれているのは、ケロロ曰く「我輩が作ったプリンであります!」とのこと。

 何でも、クルルにプレゼントしようと作った時の失敗作――いや、ちょっとばかり余分に出来たというもので、ギロロたちへのおすそ分けらしい。ケロロにしてみれば、1番出来が良いと思ったらしい1個を持って、ついさっきクルルズラボへ行ったばかりだが……。

(ま、まあ……ああ見えて、クルルの奴は、腹は丈夫だからな……)

 少し、流石にあの嫌味な年下の参謀の心配をしてみたが、今はむしろ自分たちの身を案じた方がいいかもしれない。

 妙に甘ったるい匂いをさせつつ、何故かふくらんで、その一部が溶けてどろりと崩れている。焦げ臭いカラメルソースをトッピングされた、プリンであるはずのソレを睨みつけるギロロ。甘いものが好きなタママも、これは食べたくないらしく、涙目でどうしたものかと思案していた。

「……でも、懐かしいでござる……」

「?何がだ?」

「ほら、小さい頃に3人でプリンを作ったことがあったでしょう?」

「――――ああ、アレか……」

 ドロロが指す出来事は、ギロロの脳裏にすぐに浮かび上がってくる。そして、2人はそのまま、その当時に思いを馳せていた――。

 

 その日、もうすぐやってくるプルルちゃんの誕生日に3人で手作りのお菓子をプレゼントしようという話になった。

 レシピを探して、材料を用意して。

 ドロロ――ゼロロの家のキッチンが1番広かったため、そこを母親に頼んで使わせてもらって、その当時プルルちゃんが好きだったプリンを作ろうとした。

 しかし、初めてということと、レシピだけではいまいち作り方を理解できないという幼さから、結果は惨憺たるものであった。

 かなり形崩れをおこし、なめらかさとは程遠いプリン……に、なるはずだったもの。

 しかし、やはり捨てるのは勿体無くて、3人でせめて1個ずつ食べることにした。

『ゼロロのサクランボ、いっただき!』

『え!?ケ、ケロロ君ひどいよぅ……!』

 せめて、と不恰好なプリンにのせた生クリームとサクランボ。

 ショートケーキのいちごのように、最後に食べたいととっておいたそれを横取りされて、ゼロロは今にも泣き出しそうに顔を歪める。そんなゼロロのサクランボをあっさりぱくんちょ!と食べたケロロの頭を、ゴインッ!!と結構いい音で殴ったのは、ギロロだった。

 文句を言うケロロを無視して、ぱちぱちと目を丸くしているゼロロの皿に、ギロロは自分のプリンにのっかっていたサクランボをひょいっとのせる。

『え……?』

『ほら、食べろよ』

『で、でも……』

『今度は、ケロロに取られるなよ』

 言葉を紡ぐギロロの雰囲気は、とても優しくて、あたたかくて、嬉しくて。

 ――本当は、冷蔵庫の中にはまだいくつかサクランボが残っていたのだけれど、ギロロがくれたそれは、とても甘酸っぱくて、おいしかった……。

 

 ギロロとドロロは、そんな感じで昔の記憶を共有して、かすかに頬を染め合っている。そんな先輩たちの無駄なラブラブっぷりにあてられて、タママは呆れたように半眼で溜息を吐いた。

(やってらんね~、ですぅ……)

 自分の存在を無視してイチャイチャ――それも、無自覚だったりするものだから、手に負えないくらい性質が悪い。

(……軍曹さぁ~ん、早く戻って来てくださぁ~い……)

 そして、このバカバカバカップルに突っ込んで欲しいと、切実に願う。

(そしたら、このプリンだって食べますからぁ~……)

 タママのそうした願いが届くのは、まだ相当後のこと……。

 

 《END》

付き合いきれないって言っていい?

 

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クッキー〈前編〉

 ハロケロ4日目で、今回は初めて川谷が前編を担当させていただきます!

 キャラクターはケロロ、クルル、ドロロで、相方の悠氏が『こどもの箱庭明け方の宙』にてギロロ、タママで後編をアップしているので、そちらと併せてご覧いただければ幸いです。

 

 唐突だが。

 今、ケロロはドロロの家に遊びに来ている。

「全く……あーもう!夏美殿はひどいであります!!」

「ケ、ケロロ君、でも――――」

 つまみ食いはよくないよ、とドロロは窘めるが、頭に血が上っているらしいケロロは聞いちゃいない。とりあえず文句を言いたいだけなのだろうと察したドロロは、そのまま苦笑しつつ、聞き役に徹することにした。

 

 ケロロがドロロの家にやって来たのは、ついさっき。

 今日は、夏美、モア、小雪、クルルの4人が、日向家キッチンにてクッキー作りを楽しんでいるのだ。昨日の夕食時に、ドロロは一緒に暮らしている小雪から、『明日、夏美さんたちとくっきーを作る約束をしているんだ!』と聞いていたので、その経緯は知っている。

 何でも、小雪たちのクラスが今度チャリティーバザーに参加することになり、そこで手作りクッキーを販売するらしい。今回はその練習で、『どうせなら皆で作りましょう!』とモアとクルルも加わり、台所はとても賑やかだった。

 甘い、甘いおいしそうな香りで満たされる空間に、ケロロが入っていったのは、元々は飲み物を物色しに行ったらしい。しかし、狐色に焼きあがったクッキーが皿に盛られていたので、ケロロはそれを1枚勝手につまみ食いをしたのだ。

 結果、すぐにそれがその場で夏美にバレて叱られ、『しばらく台所立ち入り禁止!!』と締め出されたのである。

 

 ドロロが思うに、それは温情の下の処遇であったと感じるのだが、当のケロロは『クッキーをもっと食べたかったであります!』と不満らしい。

「クッキーの1枚や2枚くらい、別に食べたっていーじゃん!」

「うーん……」

「夏美殿もケチケチしちゃってさぁ……」

「……ケロロ君、あの……」

「何ヨ、ドロロ」

「――もしよければ、僕が作ろうか?クッキー……」

 材料はあったと思うから、と言えば、パアッ!と一瞬で上機嫌になったケロロ。「早く食べたいであります!」と強請る様子に苦笑しつつ、割烹着を身に着けて台所へ向かう。

(……クルル殿はやはり、ギロロ殿にあげるのでござるかなあ?)

 そんなことを考えながら、ドロロは嬉しそうに台の上に道具を並べ始めた。

 

 一方、その頃……。

「これだけあると、結構壮観ね~」

「てゆーか、多種多様?」

「後で皆さんにもおすそ分けに行きましょう!」

 そんな感じではしゃぐ3人から気持ち距離を取って、クルルは大量のクッキーを前に、少し引いていた。どれくらいの相手におすそ分けをする気なのか知らないが、コレはいくらなんでも作りすぎだろうと思う。

 アーモンド入りのロッククッキー。

 チョコチップクッキー、レーズンクッキー、アイスボックスクッキーなどなど。

 どれもこれも甘い香りを放ち、もう台所は完全にソレに支配されている。

「後は型抜きクッキーだけね」

「クルルさんはどんな型を作るんですか?」

「……テキトー」

 用意していた厚紙を折ったり曲げたりして、クッキー型にする。

 これを拒否すると後々面倒だと判断したため、クルルもグニグニと紙を弄んで、何となく形を作っていく。

「夏美さんのは、数字ですか?」

「う、うん……」

(――分かりやす……)

 思わず喉が嗤うってものだ。

 見慣れた3つの数字だけが、やけに丹念に形を整えられている。元々この少女はこうした菓子作りは得意だといっていたし、上手いことには驚かないが……。いつもの気の強さはどこへやら、あの唯一自分が認めた男を前にすると、夏美は妙にしおらしい。

 そのまま他の2人の型を見れば、モアは星型、東谷小雪のそれは手裏剣だろうか?

 妥当といえばそれで通じるような組み合わせに笑う。すると、未だに何の形にもなっていない厚紙を、夏美が横から不満そうに凝視してくる。

「――ねえ、クルル」

「何だよ」

「……ううん、何でも無い」

 言いよどんで飲み込んだ言葉は、しっかりとその顔に表れている。しかし、あえてそれには気付かない振りをした。

 

 《to be continue…》

甘い甘い、やさしい気持ちは誰の元へ……?

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スコーン〈後編〉

 ハロケロ3日目の後編で、指定キャラクターはケロロ、タママ、ドロロです!

 相方の悠氏が『こどもの箱庭明け方の宙』にて、ギロロとクルルで前編をアップしているので、そちらと併せて読んでいただければ、きっと2倍くらい楽しめるかと……! 

「ねー、ドロロ~、まだ食べちゃダメでありますかー?」

「ケ、ケロロ君……」

「僕も、もうお腹ペコペコですぅ~」

「タ、タママ君まで……」

 うっかり昔の言葉遣いに戻っているドロロは、2人のおねだりに押されつつも、手に持っている袋を安全圏へ移動する。そんな様子に、緑の幼馴染兼隊長と年下の突撃兵は不満を隠そうとしない。

(ど、どうしよう……)

 じんわり……と、冷や汗が手の平に浮かんできて、袋が手から滑ってしまいそうだ。そのことを気取られないように、もう少しそれを背後に持って行く。

 

 ドロロの持つ袋には、沢山のスコーンが入っている。

 今日は、別に会議があるわけではなかったが、いつものようにタママはケロロの部屋に遊びに来ていた。ドロロはそんな2人に挨拶をして、珍しく極普通に基地への扉に手を掛けた所、口々に制止の言葉を掛けられたのだ。

『クルル先輩のラボに行くのは、今は止めといた方がいいと思うですぅ』

『たったさっき、ギロロが連れて行かれたでありますからなぁ~……』

 当然のように、自分がクルルのラボに行こうとしていたことを指摘され、そのことに慌てふためく暇も無く、ギロロがクルルズ・ラボに連れて行かれたという話に首を傾げる。

(……ギロロ君が、ラボに……?)

 ギロロとクルルは、何だかんだで実のところ、兄妹のように仲がいいということは、ドロロも知っているのだが―――。

 ギロロが武器の修理を頼みに、自分からラボを訪れたのならば、それは稀有なことではない。だが、クルルからギロロを呼び出し、連れて行くというパターンは滅多にないことだ。

 ―――あるとすれば……。

『……隊長殿、もしや……』

『違うでありますよ!今回は、侵略兵器の実験じゃないであります!!』

『……』

 毎回、ギロロを実験台にしているため、そのことを疑われているということはわかっているらしい。しかし、日頃の行いのため、ドロロはすぐにケロロの言葉をすんなり信じることが出来なかった。

『あ、何でありますかその眼差し!?―――ああ、でも、そういえばここ最近、クルルは忙しそうだったでありますな……』

『何か大きなモノを作ってたみたいですぅ』

『ドロロ、何か知らないの?』

『いや、拙者は……』

 ドロロも最近クルルがラボで何やら作業に没頭していたことは知っているが、何をしていたのかということまでは知らされていない。ただ、その作業は昨日で終わったのだと言う連絡は貰っている。

 そして、『3時半に来い』というメールも……。

 用件は書かれていなかったが、ドロロは久しぶりの少女からのソレが嬉しくて、それを形にしようということもあって、今回スコーンを作ってきたのだ。

 張り切って作りすぎてしまったので、『皆の分』として。

(……クルル君、喜んでくれるかな……?)

 

 数日前、赤い髪の幼馴染の青年が、実家から沢山の材料が送られてきたのだということで、山ほどのおいしい手作りスコーンを振舞ってくれた。

 彼の兄が、そうした料理に精通していたのだと、昔少し照れ臭そうに話してくれたことがある。そして、その兄から教わったと言うそれは本当に、サクサクとほんのり甘く、おいしくて――。

 ふと、自然と少女の方に視線を向ければ、スコーンを味わうその表情が、驚きと、食べることを幸せに感じているという2つが混じっていた。

 おいしそうにものを食べる誰かの表情は、見ている方も嬉しくなる。

 まして、その相手が愛しい人ならば、なおさら――――。

(こういうお菓子、好きなのかな?)

 カレーライスも甘口がお好みのようだから、クルルはひょっとしたらこうした甘いものというか、ほっとするような味わいのものがお気に入りなのかもしれない。

 新しいその一面を知れたことで、ドロロの口元にふんわりとした笑みが浮かんでいた。

 

 そうして、今日。

 レシピを見ながらちまちまと作り、ちゃんと味見をしてから持ってきたスコーン。

 皆の、と言いつつ、思い浮かぶのはやはり金髪の想い人。彼女は喜んでくれるだろうかと思いつつ、2人がケロロの部屋に上って来るのを待っている。

(3時半になりそうだったら、行こうかな……)

 そういえば、丁度それはおやつの時間なのだと今更気付く。ならばなおさら、こうしてスコーンを作ってきて良かったな、と思いつつ――。

「ドロロー!!」

「ドロロ先輩!!!」

「「お腹が減った(であります!!)」(ですぅ!!)」

「あ、あともう少しで2人共上がってくるかもしれないから……っ皆で……!」

「えー!!いーじゃん、先に食べててもさぁー!?」

「食べたいですぅー!!」

(うう……っ!)

 そんな感じで、『『早く早く!!』』とスコーンを狙う2人の猛コールは、どんどん勢いを増していく。

 果たしてあとどれくらい持ち堪えることができるだろうか――と、ちらりと扉を見てみるが、一向にそれが開く気配は無い。

(ギロロ君、……クルル君……!!)

 どうか、少しでも早く……と、ドロロは待ち人の来訪を祈るのだった。

 

 《END》

たべものをおいしく食べるひとたち。

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ケーキ〈後編〉

 ハロケロ2日目の後編です。

 担当キャラクターは、タママ、クルル、ドロロの3人で、相方の悠氏が『こどもの箱庭明け方の宙』にて前編をケロロ、ギロロでアップしているので、そちらと併せてご覧くださると幸いです!

 

「ふんふふふ~ん♪」と小気味良い鼻歌混じりで、タママは泡立て器をカシャカシャカシャ。

「11月~22日は~、僕とぉ軍曹さんの~記念日ですぅー❤」

「タママ殿は、とても楽しそうで、嬉しそうでござるな」

 にこにことその様子を微笑ましく見守るドロロも、別のボールで卵と砂糖を手際よく混ぜる。その横に、振るい終わった小麦粉とベーキングパウダーが入ったボールを置いたクルル。

(ある意味、すげー妙な光景)

 タママもドロロも、どちらもケロロが好き。

 しかし、モアに対する時とは違い、タママはドロロに食って掛かることはなく、むしろ懐いている節がある。今回、「僕も軍曹さんにケーキを作ってプレゼントしたいですぅー!(んでもって、軍曹さんのハートをばっちり鷲掴みにするぜコラァー!!)」と言い出したタママに、違和感無く便乗したドロロ。

 何故か、ラボの簡易キッチンを貸すだけだったはずのクルルまで参加する流れとなったことだけが謎だったが、何はともあれ、3人はしっかりと役割分担をして、せっせとケーキ作りに励んでいる。

「クルル殿?」

「んあ?」

「クルルセンパーイ!生クリームの準備、バッチリです!」

 ほら!と、得意げに泡立てた白いクリームを見せてくるのを見ると、何と電動泡立て器を使うよりも硬くなっていた。しかし、そこには敢えて突っ込みを入れずに、

「じゃ、ソレ冷蔵室に入れて果物切れ」

と指示を出す。少年兵は素直に返事をして、パタパタと簡易キッチンの隣にある冷蔵室にボールを持って向かっていった。

 少し前にクルルが作った冷蔵室には、今回必要な果物なども全部入っているのである。何故『冷蔵庫』ではなく『冷蔵室』なのかという疑問があるが、本人曰く、「大は小を兼ねる」かららしい。

「……あの、クルル殿?」

「何だよ」

「――いや……少し、ボーっとしているように思った故……」

 さっき名前を呼んだのも同じような理由らしい。

 別にそんなつもりは無かったし、クルルは一応彼らの声も聞いているため、反応の機敏性に問題は無い。そのため、「別にぃ?」という少女の言葉にドロロは何の疑いも無く納得したようだった。

「今頃、隊長たちはすげえことになってるだろうがなぁ~?」

 ここにはいない、ケロロの巻き添えになったであろう赤達磨。2人は今頃、自分が作った機械相手にまだ格闘しているのだろう。その様子を想像すると、自然に嘲笑が浮かんでくる。

「……あの、クルル殿……」

 そんな時、やや控え目にドロロは、「1つ訊いても……?」と申し出た。

 その答えとして、クルルは至極あっさりと、

「言いたきゃ言えば?」

と、そっけない。

 しかし、それはクルルにとっての了承であると今までの付き合いで理解しているドロロは、それでも少し遠慮しつつ疑問を口にする。

「……何故、台所や道具ではなく、隊長殿に機械を渡したのでござるか?」

 だからこうして自分たちは簡易キッチンでケーキ作りができるのだが――。

 すると、クルルはシニカルな笑みを浮かべつつ、少し呆れたような響きのある声で言葉を紡ぎ出した。

「考えりゃ、多分分かるぜぇ」

「……?」

 暇つぶしや、まあその方が面白いことになるだろう、という理由はモチロンあるが、この場合―――。

(台所の修理なんて、俺の仕事じゃねぇ~んだよ……)

 あの料理音痴に貸したりすれば、簡易キッチンの機能停止は目に見えて明らか。この寒くなってくる季節にコーヒーが飲めなくなるのは、御免被るってヤツだ。

 それにしても……。

「アンタ、ずいぶん隊長にベタボレされてるみてぇ~だな」

「――――っえ……!?」

 皆で、と訂正していた(させた、とも言う)が、本当はこの青年と2人で食べるために作りたかったのだということは、容易に察しがつく。ちなみに、わざわざ訂正させたのは、何となくお気に入りのおもちゃを取られるのを嫌がるような、そんな気持ちなのだろうが、そこの部分をクルルは敢えて気付かない振りをした。

 そして、ドロロは案の条、純情にも頬どころか体全部を真っ赤にして、あたふたあたふたと大慌てだ。

 その様子が可笑しくて、クルルは更に悪戯っ子のような笑みを深めた。

(……うう……)

 ―――絶対、からかわれている……。

 分かってはいるのだが、一度上がってしまった熱はそう簡単に戻ってはくれなさそうだ。気休めに両手で頬を覆うと、更に喉を鳴らして笑う気配を感じる。しかし、今更手を下ろすことも出来ず、余計顔が熱い。

 ふと。

 そう、ふと、ある1点の疑問が、ドロロの脳裏をかすめた。

 それを言葉にすべきかどうか、少々ぼや~ん……と熱に浮かされた思考はいつもほどそういった吟味をせずに、つい、口を動かす。

「―――クルル殿は、ギロロ殿にケーキをあげないのでござるか?」

 

 その3分後。

 果物を両手に沢山抱えて持ってきたタママがキッチンに入ると、何故かドロロもクルルも、林檎のように、苺のように真っ赤になって、俯いていたとか、何とか……。

 

 《END》

きっと、その日はいい日になる!!

 

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パイ〈後編〉

ケロロ、タママ、クルルが指定キャラクターです。

パイの前編は、相方悠氏の『こどもの箱庭明け方の宇宙』にて、悠氏がギロロとドロロをメインにアップしていますので、そちらと併せてご覧下さい!

「「……」」

「いやいやいやいや。どーぞ、そのまま続けちゃって~?」

 にんまり、と人の悪い笑みを浮かべる緑の幼馴染の言葉によって、甘やかな空気は一気にぶち壊しとなった。

 赤くなって俯いている2人を楽しそうに観察するケロロとクルル。

 次に口を開いたのは、相変わらずパイを頬張る最年少の少年兵だった。

「でも、ギロロ先輩がパイを作れるなんて、ちょっと意外ですぅ~」

 さり気なく失礼な気もするが、確かに肉刺だらけかつ傷だらけの節くれだった彼の手で、こうしたおいしいお菓子が生み出される感想としては、実に素直かもしれない。

 そんなタママの言葉に続いたのは、そうした感想を言われたギロロではなく、ドロロの横に座っているクルルだった。

「クック……大方、兄貴に習ったんだろぉ~?」

「む……ま、まあ、な……」

 何事も如才なくこなすギロロの実兄は、こうしたお菓子作りも上手い。

 しかも、教え方も丁寧で、そんな実兄のおかげでこうして小器用になったギロロだが、いざそれを指摘されるとやはり複雑なようで、その相槌はかなり歯切れが悪かった。ちなみに、もちろんクルルは確信犯でわざとそんな言葉を挟んだのだが。

 しかし、「成程ですぅ~」と納得したらしい返事の後、タママは再びピタリ、と手を止めて、ふと思ったらしい疑問を口にする。

「でも、ギロロ先輩が作ったパイ、何だか前にクルル先輩が作ったアップルパイと、ちょっと味が似てる気がするですぅ~?」

 ――――ピクッ。

 アップルパイを再び頬張っていたケロロの動きが、止まった。

 そのことに、過剰に反応したのは、赤と青の幼馴染。ちなみに、モア、ケロロ、タママの3人と、ギロロ、ドロロ、クルルの3人がこの順番で向かい合うように座っているため、クルルはケロロの様子を気に掛けていないらしい。

 隣に座っているものの、今は自分の疑問を解決したいタママは、無邪気に、「どうしてですかぁ?」と興味津々で尋ねている。少し焦らしつつも、クルルは比較的あっさりとその理由を口にした。

「昔、ガルルの奴と作ったこともあるからな。味覚が似通ってんだろ」

「そうだったんですかぁ!」

 納得がいったらしいタママとは正反対に、明らかに面白くなさそうなケロロ。

(――何で、タママがクルルの手作りパイを食べて……つーか、何で我輩にはくれなかったんでありますか!?)

 ジトリとギロロとドロロに視線を向けたところ、2人は仲良く首を左右に振る。そのことに少し安心して、しかし完全には納得できず、恨みがましく駄々っ子のように言葉を連ねた。

「クルル!」

「くぅ?」

「我輩、クルルのパイは食べたこと無いであります!!」

「はあ~?」

「クルルのパ・イ!!何でくれないのさー?!くれたって良いじゃん!!」

 何で何でー!?を連呼するケロロをクルルは明らかに呆れて眺めている。

 何も語ろうとしないクルルに代わり、言葉を紡いだのはモアだった。

「えっと……実は、一昨日ナッチーさんたちとアップルパイを作ったんです。そして、丁度出来上がった時にタママさんが遊びに来られたので、おやつに皆さんで食べていたんです。てゆーか、和気藹々?」

「そういえば、小雪殿がお菓子を作って皆で食べてきたと……」

「クック……まあ、そ~ゆ~コト」

 ドロロの台詞を引き継いで、その話題は終わりだというように、クルルは再びパイをかぷっと齧る。斜め前の少女の、いつもよりも幼く見えるその様子は福眼ではあるものの、やはりケロロはどうにも釈然としないものを感じる。

 タママに嫉妬しているわけではないが、それでも、羨ましくはある。

(……クルルのパイ、食べたかったでありますなぁ~……)

 片思いだとしても、それくらい、ほんの少しだけ報われたいと願っても、バチはあたるまい。

 ギロロの作ったパイはちゃんとおいしいけれど、クルルの、食べることの叶わなかったアップルパイがちらついて、何だか少し、苦い。

(ギロロとドロロのいちゃいちゃムードを見てたら、余計虚しくなったであります)

 いつもなら、クルルと2人でつついたり、応援しようとか、余計なお節介をしたくなるのに……。そんなやる気も削がれたまま、ちょっと苦いと感じるアップルパイをヤケ食いヨロシクで口に放り込む。

「おいケロロ、その位にしておけ」

「えー……いーじゃん、別にさぁ……」

 自分たちばっか幸せで、ずるい、とは、流石に言わない。

 それでも不満だけは訴えるケロロに、ギロロは呆れつつもどこか険のない響きで言葉を掛ける。

「よくない。――小分けにして持たせてやるから、今は止めておけ」

「……んー……」

 ガサゴソと袋にアップルパイを入れていくギロロとクルルとモア。

 ギロロの味気ない紙袋のそれをクルルがからかい、モアとクルルはリボンをつけたりと結構凝り始めている。

「はい、おじさま」

「ほらよ」

「ゲロ……?」

 そして、器用にラッピングをしたソレを、2人は1つずつケロロに差し出した。

 何でも、「ケロロには2袋やれ」というギロロの計らいらしい。

 開けるのが勿体無いくらい綺麗にラッピングされたソレを、ケロロはこの上なく、とても嬉しそうに受け取った。

「ありがとうであります!!」

 

 《END》

幸せなら、いいじゃないか!

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誰かと飲む紅茶

 2人が買い物に出掛ける日は、これでもかと言うくらいに晴れ渡っている。夏の日差しが無情にもコンクリートを焼く独特の匂い。しかしまあ、風が吹いているため、まだ少しは過ごしやすいと言えるだろうが……。

(くーっくっくっく……ドロロ先輩があそこまで嬉しそうにしてるっつーのに、あのオッサン全く気付いてねえし)

 かれこれ、ずいぶんと彼らとは長い付き合いになるが、昔から2人はこんな感じだ。

 どんな感じなのかというと、お互い図って示し合わせたかのように、肝心な瞬間を見ていない。明らかにお互いが相手に好意を抱いているという決定的瞬間に、いつだって緊張だとか別のことで頭をいっぱいにしている。

 ここまでくると、もうケロロとクルルの間では笑い話になっていたりするのだが……。

「クルルは、この辺に結構来るんでありますか?」

 ふと、隣を歩いていたケロロの問いに、クルルは肯定の言葉を返す。この辺はいろいろいい店がそろっているので、ドロロとは勿論、1人ででもちょくちょく訪れているのだ。

 普段、引きこもっているのは事実だが、地球に来てからは昔よりも外出することが多くなったように思う。

 ケロロは、「へー」と感嘆の声で呟き、おそらく来たことがないであろう、外装の凝った店の立ち並ぶ道の左右を眺めている。

 その様子が何だかとても子どもっぽく見えて、クルルは自分でもよく分からない笑みを浮かべた。

 

 やがてドロロたちが1軒の店に入っていったのを見て、2人もまたその店に入って行く。決して大きいというわけではないが、照明を少し落とした店内は落ち着きがあり、上品な演出をしていた。

「こんにちは」

 ギロロとドロロの様子をちらりと見ていたクルルに声を掛けたのは、ここのマスターの1人娘だった。クルルよりは年上で、どちらかといえば幼馴染み3人と同じくらいの年齢だろうか。大人しいと言うよりも、芯の通ったしっかり者という印象を受ける、はっきりとした話し方が印象に残る。

 クルルがここに来たのはまだ数回目だが、向こうもクルルやドロロのことを覚えていたらしい。

「今日は、新しい緑茶の試飲をお勧めしているんですけど……何か、お楽しみ中でしたか?」

「……新しい緑茶?」

 さらりとつかれた核心。そのことに対する動揺はこれっぽっちも見せることなく、目新しい話題について訊き返す。娘はにっこりと笑ったまま、「あちらの方はそれを購入してくださるようですね。マスカットの緑茶です」と穏やかに答えた。

 夏になると、フルーツの香りのお茶がよく出回るようになる。これもその1つだろう。

 勧められて飲んだその緑茶は、確かにすっきりとしていておいしい。

(……でも、ドロロ先輩が買ってったならな……)

 何やら、『本日、恋人同士でいらっしゃいました方には茶葉をサービスさせていただきます』という貼り紙に真っ赤になっていたが。あの量の茶葉は、ドロロとギロロだけでは消費しきれないだろう。何より、ドロロ性格だと、普通に皆で飲もうと言いそうだ。

 そう判断したクルルは、その隣にあったミントティーを1缶所望した。

 前に1度飲んだのだが、結構これはクルルの嗜好に合っていたのだ。

 会計をする時に、娘は「コレ、おまけです」と言って、お茶缶と一緒にいくつかの焼き菓子を袋に入れて差し出した。

「コレは初めから量が決まって入れられていて、増量できなかったので」

「……」

「またのお越しを、お待ちしております」

 娘の晴れやかな笑みに押され、取りあえず店の中をウロウロしているケロロは放っておいて外に出る。

 慌てて追いかけて来たケロロが何か言っているが、しばらくクルルは顔を合わせようとはしなかった。

 

 前を行く2人が元通りになるよりは早く、2人はいつものようになるのだけれど。

 

 《終わり》

悠氏の『甘いお茶の正体は』とのコラボレーション小説です。

ケロ→クルなので、意識しているのかは分からないけれど、改めてそんなことを言われると動揺するクルル、でした。

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ストレートティーと角砂糖

『ティーキャディー』を買いに行くと言って出掛けた2人からある程度距離をとって、2人でてふてふと歩いていく。ギロロとドロロは、ティーキャディーの他にも新しい茶っ葉を購入して、どちらも穏やかに笑っているが……やはり、それまでだ。

「手ぐらい、繋がないんでありますかねぇ~……」

「あのヘタレじゃ無理だろ」

 もしそんなことがあるとしたら、ドロロの天然故の行動だ、というクルルの台詞に、ケロロは心底納得した。

 この際、自分も今すぐ近くにある者の手を握れない、なんてことは棚上げだ。

「あ、クルルは何か買わないんでありますか?」

「もう買った」

「早!!つーか、いつの間に……」

「それより、2人は喫茶店に入っていくみたいだぜぇ?」

 白くてほっそりしていて、少し傷跡の目立つ指の先を見れば、どうやら一通り買い物を終えたらしい2人が、カランカラン……と店に入って行くところだった。

 モチロン、その後少し時間を置いてケロロとクルルも中に入る。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

 にこりと、見ていて気持ちの良い営業スマイル。おそらくアルバイターなのだろうが、しっかりと礼儀などが身についているらしい。

 ケロロは、ここに来るのは初めてなので、周囲のディスプレイがすべて珍しくてキョロキョロと店内を見回す。すると、不意打ちで脇腹にドスッ!と結構本気で肘鉄を沈められた。

 生理的な涙を浮かべて訴えるように睨むように視線を向ければ、クルルはそれをきれいに無視して、ギロロとドロロのテーブルが見える、だいぶ離れているテーブルに座った。そこは喫煙テーブルで、初めからガラスの透明な灰皿が置かれている。

(……こーゆートコ、変わんないっつーか……なんか、なぁ~……)

 一応一言断ってから、向かいの席で煙草を1本。

 白い煙が天井に届く前に掻き消えるのを眺めながら、斜め後方に神経を集中させる。

 よくよく見てみれば、店の中の他の客たちもギロロたちのテーブルをしきりに気にしていた。

(あの2人は、昔から目立つであります)

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 ウエイターの声に、ハッと我に返ったケロロは、まあ当然メニューなど見ていなかったわけで。咄嗟に、クルルが頼んだダージリンのストレートティーと「同じものを」と口走った。

 かしこまりました、と言ってから、ふとウエイターの青年はカウンターには戻らずに、そのままクルルに話しかける。

「今日は、お姉さんとご一緒ではないんですね」

「ああ」

(―――お姉……もしかして……)

 思わずチラリ、と、談笑している、蒼く銀色に輝く髪を持つ幼馴染みを凝視する。

 ―――確かに、もうまんま『女』に見えなくも無いが……。

 どうやらドロロとクルルはこの店に2人で来たことがあるらしいということがわかる流れではあった。

 クルルは青年の『お姉さん』発言などを否定・訂正することは無く、フッ……と、何かを企んでいるような魅惑的な笑みを浮かべてから、ニッコリと笑う。

 

「たまには、彼氏さんにお株を譲ろうかと思いまして」

「あ、そうなんですか!」

「はい」

 非の打ち所の無い、丁寧な言葉遣いでさらりとそんなことを口にする。ウエイターの青年は、その直後に別のテーブルの客に呼ばれて、「それでは」と笑顔で去っていった。

 クルルはその後、上機嫌に運ばれてきたストレートティーを飲み、お勘定に行ったギロロが盛大に小銭をぶちまけたのを見て、愉快そうに笑っていた。

 当然、ケロロも大爆笑していたわけだが。

 

「かわいらしい妹さんですね」

 お勘定を払う時、さっきとは違うウエイターにそう言われ、ケロロはふと苦笑する。

(いもうと、で、ありますか……)

 しかし、今はそれも悪くないだろうと結論付けて、そのままクルルと2人で、帰路につく2人を追いかけていった。

 

 《終わり》

悠氏の「甘い飲み物」とリンクしているケロ→クル。

相変わらず、保たれている距離。

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レモンティーの内緒話

 ギロロとドロロがお茶会をしている部屋の隣で、ケロロとクルルはクルルのノートパソコンを覗きながら苦笑していた。

(見ていてコッチがはずかしくなるでありますな~)

 ケロロにとっては、2人とも付き合いの長い幼馴染。故に、ずーっとこんな感じの2人の進展しているような後退しているような仲を見守っていた。そして、数年前からはこちら側にクルルも加わって、以前ほどやきもきすることは無くなったのだが……。

 押しの弱いギロロと、天然記念物なドロロとの、好意と好意はいつまでたってもそれぞれ一方通行のまま。

 今だって、この上なくいい雰囲気だというのに、ティーキャディーを買いに行く約束をして止まっている。どうしてそこでもう1歩を踏み出せないのかと、監視カメラの映像を見ながら溜め息を吐いた。

「――あ、コレ、いつもとニオイが違うであります」

「あ?何を今更……」

 まあ、確かにようやく手にしたカップの中身は、ほんの少しぬるくなっていたのだけれど……。せっかくクルルが淹れてくれたというのに、この失態はまずかっただろうか。

 しかし、一応いつもと違うという変化に気付いたからか、さしてクルルからの風当たりはキツクはない。これはあと、いつもとどこが違うのかということを固有名詞をもって当てれば……。

「……クルル……」

「んー……」

「―――ゴミン、分かんない……」

「クックー、だろーな」

 生憎、ニオイは分かるが、実際飲んでみても、『いつもと違う』ということしか分からない。形容詞を加えると、いつもよりもサッパリ、かつスッキリしている……という所だろうか?

「ね、教えてくださいであります!」

「明日になったらなぁ~?それまでせいぜい自分で考えろよ、隊長」

「ゲ、ゲロ~……」

 何か、甘やかしてくれない先生のような台詞だ……。

 ケロロの方が(階級はともかく)歳も上だし小隊内の位置も上(のはず)だが、大抵クルルの方が大人びた対応をする。

 仕方なく、このまま会話が終わってしまうのは惜しくて、別の切り口から話題を選び出した。

「ところで、このお茶はいつ買ってきたんでありますか?」

「一昨日」

「一昨日……」

 そういえば、その日はドロロも出掛けていたように思う。ギロロがいつものごとくグチグチと悩んでいじけていたのを思い出して、ケロロは再び苦く笑った。

 おそらく、あの日ドロロはクルルと出掛けたのだろう。この2人は本当の兄妹(姉妹にしか見えないが……それか姉弟)のように仲が良い。ギロロも流石にクルル相手に大人げない嫉妬はしないが、多分あの日は自分自身の意気地のなさに嫌気が差していたのだろう。

(――なぁんて、我輩も他人のコト言えないでありますな……)

 そのまま、画面を見ているクルルの横顔に視線を向ける。

 あのヘタレが珍しく、ヘタレにしては頑張っていたのだから、たまには自分も、少し大胆になってみようか。

「クルル」

「何だよ?」

「今度の土曜日さ、どーせだし2人の観察も兼ねて、2人で出掛けない?」

 その時、一緒にお茶を選んでみたいと言葉を続けると、一瞬驚いたようなクルルの表情が目に映る。そして、いつものニヤリとした笑みを浮かべたクルルが、「隊長、ロクに区別つかねーくせに」と言いつつ、OKをくれるのだった。

 

 《終わり》

悠氏の『ティーキャディーの香り』とのコラボレーションです。

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虫よけ

 『こどもの箱庭明け方の宙』の相方・悠氏とのコラボレーション小説です。もしかしたら、2つ併せて読むと、おもしろいかもしれません……。

 虫刺されだらけのドロロの隣にいるのは、散々熱を上げられた赤だるまではなく、ぶらぶらと石に腰掛けて、自由な足を振り、空を見上げている金髪の後輩。

 暑いからと昼間はほとんど見ることのできなかった、普段日に当たることのない白い肌が、月明かりでぼんやりと浮かぶ。幻想的で、魅惑的で。思わずそこに視線がいってしまうのは、仕方ないだろう。

(だって、我輩、男の子だし☆)

 夏美たちが選んだ水着を着たクルルを拝めただけで、ここに来た意味は十二分にあったというものだ。流石に手を出す、なんてことはできないだろうけど、折角の機会を無駄にしないようにと、ケロロはじ―――っと、クルルを遠目に見つめてみる。

「おい」

「ゲロ?お、復活したでありますか~?ギロロ」

 低い声に呼ばれて振り返れば、案の定、ついさっきまでその辺に座り込んで、なんだかもういっぱいいっぱいだった赤い幼馴染の姿。ニコニコと上機嫌なケロロとは対照的に、その、ただでさえ『怖い』と評される顔は、3割増しでキツくなっている。

「さっきから、何をしているんだ貴様は……」

「何って……心を潤すための、目の保養?」

「アホか!この変態が!!」

 かすかに声は抑えられてはいるものの、その言葉に心外だといわんばかりに、ケロロもムッと、口を尖らせた。

「ヘンタイとは、聞き捨てならんでありますなあ……。我輩は、まっとうな青年男子として、心の赴くままにある一定の節度を持って行動しているだけであります」

「やってることは、ただののぞきと大差無いだろうが!」

「何おう!?そういうギロロだって、さっきまで虫刺されで涙目になってるドロロを見て、真っ赤になって危ない人になっていたくせに!!」

「――っな……!?だ、だれが……!!」

「それに比べたら、まだまだず―――っと、我輩の方が健全でありますよ!このヘタレ赤だるま!!」

「―――っだ、だまれ!!」

 がさっ。

「軍曹さーん、ギロロセンパーイ、薪集まりましたかぁ~?」

「タ、タママ……いや~、ちょーっと手間取って……っおお!?ずいぶん沢山拾ってきてくれたんでありますな!ありがとうであります!」

 いきなりのタママの帰還に2人は慌てたが、誤魔化すように言われた言葉の後半部分は、きっと本心だろう。そんなケロロの言葉に、タママは誇らしげに、かつ、とても嬉しそうに笑っていた。

 

 その頃……。

 ようやくかゆみが完全におさまってきたドロロと、その隣でぶたの蚊取り線香をいじっているクルル。

 ドロロは、自分よりも低い位置にある金の輝きを見つめながら、ふっと自分の思考に集中する。

(ケロロ君が、手順を踏まずに先走ることって、このコトに関してはないだろうけど……)

 散々自分のことを『乙女』だの『ロマンチスト』だのと言う、実は自分以上にドリーマーでロマンチストな緑の幼馴染。しかし、流石にこんな時にクルルと2人きりにするのには、やはり抵抗がある―――。

(やっぱり、今は、まだ……)

 

 クルルは、自分よりも高い位置にあるであろう、蒼い銀の輝きを思いながら思考を深めていく。

(あのヘタレなオッサンが、そうそうこれ以上突っ走るなんざ、無理だろうがなぁ……)

 ついさっきもあれだけのことであっさり引き下がった、赤い赤い男。しかし、やはり念には念を入れて、万策を打っておくべきだろう。

(備えあれば憂いなし、ってなぁ……?)

「クルル殿」

「ドロロ先輩」

 2人の言葉は、示し合わせた和音のように、きれいに重なる。

 

 《終わり》

ほら、日常から離れても、日常は続いている。

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