頂き物

『紙魚』様から頂いた相互記念小説

【intergral】

 

「聞いてる?クルル」
 そう言われた。
「わり、聞いてない」
「もう」
 サブローはわかりやすいくらい白々しい怒りの表情を見せて笑って。もういちどチケットを揺らす。
「ポルトガルの彫刻家がさ、奥東京で個展をひらくんだよ。ラジオのスタッフからもらったんだ、一緒に行こうよ」
 そうだ、さっきもこう言ってた。俺はサブローの手にする細長い紙切れを見て、それから目をとじた。
 もう見たくない。
「面白いんだよ、この人。床にはいつくばった人物像とか作ってさ、タイトルが愛の抱擁とかいうんだぜ。なんだそれ?みたいな。1日中いてても飽きないから一緒に行こうよ」
「そんなに楽しいなら1人で2回行きゃいいじゃないか」
 サブローの手にチケットは2枚。
「クルルと一緒に見たいんだよ。クルルのものの見方って面白いじゃん。やっぱ科学者だなぁって、感心しちゃうワケ。ねぇ一緒に行こうよ」
「ケロン体で行けばタダじゃねぇか」
「ダメダメ」サブローは指をちっちと鳴らす。「アンチバリアで見えないのをいいことにイタズラするでしょ。世界を代表する彫刻家なんだよ、そんなことは絶対許しません。2人でいくの。独りじゃつまんないもん」
「お前のことなんか知ったことか」
 イタズラできない美術館なんて面白くもない。
サブローはひきさがらない。
「そういうなよ。クルル子ちゃんになってよ」
「彫刻とか絵画とか興味ねぇっての」
「クルルが絵画に興味ないのは前回でよくわかったからさ、今回は彫刻にしてるんじゃん」
「どっちも一緒だろ」
「全然違うよ、2次元と3次元だよ」
「だから、わかんねっつうの」
「わかるって。この人のは絶対マジ面白いから」
 サブローは、こと美術の方面になるとやかましい。
 詩人ぶってるせいかコイツは美術館や展覧会に行くのが好きだ。
絵や彫刻を見てるサブローは子供のように目を輝かせる。気に入った絵を微動だにせず、まるで目に焼きうつすが如く見入る姿は微笑ましくもある、恐ろしくもある。羨ましくもある。
 俺は絵の善し悪しなんて、さっぱりわからない。
「行きたくねぇ」
「わかった。じゃあ個展のあとカレー食べに行こう。おごったげる。このまえテレビで見た、あのタイカレーの店に行こう。ハーブを自家栽培してるって、あのお店で好きなの頼んでいいから」
 カレーと言えば俺がなびくと思いやがって、糞ガキが。
たしかにあの店のホーリーバジルは新鮮でうまそうだとは思ったが。
「興味ないね」
「ウソつき」
 あぁたしかにウソだ。
カレーに興味がないわけじゃない。
「そんなに外でるのイヤ?」
「…………」
 外にでるのがイヤなんじゃない。
「絵とか彫刻とかつまらない?」
「…………」
 そういうんでもない。
善し悪しはさっぱりわからないが、絵画や彫刻、音楽のなかには魂をゆさぶられるものがたしかにある。いちど見てしまったら引きつけられて目が離せないもの。あれが人生を豊かにする例のものなんだとわかってるつもりだ。
 でも、イヤなんだ。
「ケロロから聞いたよ。ずっと閉じこもってるんだって?よくないよ。たまには外でなよ」
「めんどくせぇ」
「カビ生えちゃうよ」
「こそぎ落とす」
「そういう問題じゃなくてさ」
 イヤなんだ。
自分の世界から、ここから出たくないんだ。放っておいてくれ。
なにものにも総括されたくない。
 サブローがしゃがんで視線をあわす。もう、叫び出したい。
 間違ったことをしてないなら、心配する必要はなにもない。ないはずだ。ないはずなのに。
俺は怖くてたまらない。
 サブローが頭をなでる。
「たまにはお陽様あびて、外の空気を吸わなくっちゃ。こんな暗いところにいるからイヤな奴なんて言われるんだよ」
 サブローの声が浸食する。
俺の中に加わっていく。ムカムカする、吐きたい。気持ちが悪い。どうして放っておいてくれないんだ。
「消えろ、うざい」
「ひどいな」
 そういう声も少しも本気じゃなくて、自信ありげに笑ってる。俺に好かれてると、こいつは胸を張っていうんだろう。糞ったれめ。
「興味ねぇんだよ、とっとと消えろ」
「今日はいちだんと機嫌悪いね。どうしたの?」
 機嫌が悪いんじゃない。お前が悪いんだ。お前のことが嫌いなんだ。
 ケロン人に比べて大きな手が俺の額にかぶさってくる。それはとてつもない恐怖だ。
大きな手のひらが俺を覆い被そうとする。俺の中をあばこうとする。
「顔色悪いし、ちょっと熱があるんじゃない?」
 離れてくれ、消えてくれ。
俺の側に来るんじゃない。本当に、吐きそうだ………。
「気分悪いときに付き合わせてゴメンね。具合悪いんなら言ってくれたらいいのに」
 ふいと体が浮き上がる。サブローの胸のなかに抱きかかえられる。
「ゆっくり休みなよ。ケロロには僕から言っておいてあげるから」
 俺はなんでもできるんだ。
比喩ではなく本当に。俺はなんでも出来るんだ。不可能を可能にできるんだ。
 だったら、この距離を伸ばしてくれないか。
 ラボのイスから仮眠する押入までの距離を、地球の裏側ぐらいまで、長く長くしてくれないか。いつまでもここにいられるように、いつまでもここでこの匂いに包まれるように。
 距離がずっとあればいいのに。
星をまたぐぐらい。時をまたぐぐらい。無限和。
 俺はここにいたいんだ。ここにずっといたい。
 押入の戸がすっと開く。
「ゆっくり休んでね」
「…………」
 仮眠室を近くに作ったのは自分自身。それなのにそれが憎くて仕方ない。
 ずっとあそこにいたかった。
「仕方ない。これは夏美ちゃんといくよ」
「……そうかい……」
 ほら痛い。
胸がきりきりきりきり、呼吸がとまるくらい痛い。
 なんかしてやる。
日向夏美になにかしてやる。公衆の面前で恥をかかせてやる。ざまぁみろ。
「よく休むんだよ」
 押入はしまって、足音だけが響いて。遠ざかる足音が胸を踏みつける。胸の深いところをぎりぎり踏み締める。
 俺は自分の手を見る。黄色い小さな手。なにもできない手。なんでもできるのに、肝心なことはなにもできない無力な手。
 間違ったことをしてないなら、心配することはなにもない。
なにもないはず。
 それどころか俺にはチャンスがあったんだ。なのにいつも投げ捨てている。この黄色い手でチャンスってやつを捨てている。
 だって、この手でなにが出来るっていうんだよ。
 こんな小さな手で、こんな小さな体で。
なにを欲しいって言ってるんだ。なにを求めているんだ。バカじゃねぇのか。
 いつも怯えてなにもせず、憎まれ口を叩いて、求めてるものが手に入らないと拗ねている。子供より性質が悪い。
 あいつはルックスがいい。俺は頭がいい。きっと2人で手をくんだら一儲けできるぜ。
 いや違う。俺はそんなもの求めてない。
俺の横にあいつなんかいらない。
 だれとも混じりたくない、だれとも一緒になんかいたくない。
心の中でだれかが言う。
 それなら未分化なんて中途半端な状態をやめればどうだ?天才科学者さんよ。
「うっせぇ……。だれとも関わりたくないから、俺は未分化で生きるって決めたん だ…………」
 独りで生きるって決めた。そのための選択。
 あいつのためなんかじゃない。
 俺は自分の世界で目をとじる。
真っ暗な明かりのない世界で目をとじる。
 胸がいつまでもじくじくと痛んでいた。
あいつの笑い方が、あいつのぬくもりが、あいつの匂いが。俺の暗い世界に加わって、それがずっとずっと深いところで傷んだ。
 他人との接触をずっと避けてきた俺のなかに加算されたものが生腐い匂いとともにいつまでも痛んで、俺はやっぱり目をとじた。
 なにも間違ってないはずなのに、痛くて痛くて、たまらない。

 

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『紙魚』千鳥様から、一生懸命なクルルの小説を頂いてしまいました……!

色んなものをいらないと遠ざけた先に、何があるのか。どうして「間違ったことをしているわけじゃない」と自分に言い聞かせるように繰り返してしまうのか……。

間違っていないことが正しいとは限らないような世界で、これからこのクルルがどう歩いたり立ち止まったり考えたりするのかが、すごく気になりました。

千鳥様、味わい深い素敵なお話を本当にありがとうございます!!

 

以下、ひっそりと感想や展望を詰め込み勢いで書いた小話を……。

 

『ただそれだけしか残らないから、』

“世界で思い通りになるものは、どれくらいあるのか”

どうしてそんなことを考えていたのか、ガキの頃の自分の思考回路など分かりたくもない。が、とにかく一時期、俺はそんなくだらない命題に暇を見つけては向き合っていた。

どちらかと言えば、自分の領域は数式で、言語で組み立てる文章には縁が薄い。

屁理屈をこねくり回す哲学だの思想だの倫理だのという本は、自分の領域ではないにせよ、それなりに興味があったのか。気付けば、それなりに一通りの文献を読み漁っていた。

“世界で思い通りになるものは、どれくらいあるのか”

『答え』と言える、明確なものはない。

読み漁った先人たちの言葉にそれらしい話は何回も登場した。

だが、それだけだ。

答えは無い。

どいつもこいつも、言葉を濁してごまかして終わっている。

元々そこまで期待はしていなかったとは言え、妙なしこりが残ったのは事実だ。

(――他人の思考なんざ、くそくらえだ、が……)

改めて分かりきっていたことを突きつけられるということが、ここまで興ざめするものなのかと。あの頃、自分は嗤っていた。

“世界で思い通りになるものは、どれくらいあるのか”

(結局、自分でもっともらしい結論を導き出すしかないというわけかぃ)

まあ、それはそれで悪くない。

暇つぶしとしてはそこそこの命題だと、あの頃の自分は、嗤っていた。

 

(……ククッ……)

押入れの暗闇で、嗤う。目を開けても閉じても、そこには闇しか無い。

まどろみは訪れず、ただ自分を巣食う痛みに抗うために目を閉じる。

(……ここが、俺の世界……)

この押入れは、『自分の』世界のはずだ。

それでも、ひとつの『世界』である限り、全てを自分のものにはできない。

世界は、常に侵される。

本当は、分かっている。

だから、抗うのだ。

(誰も入って来るんじゃねぇ……その代わり……)

自分も、これ以上のものは求めない。

未来に過剰な期待はしない。現在に領分を越えたものを望みはしない。

ただ、偽りの不変をもうしばらく保っておきたいだけだ。

(……ながく、)

出来るだけ長く、まだ、こうしていたい。

 

《終わり》

天秤が傾く時を遅らせる

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『有限と微小のパン』さまからのサプライズ!

【専属三ツ星シェフ】

通う道は慣れたもの──。

憮然とした表情に、機嫌はあまり良くないと知っている。
秋と言う季節は、豊富に作物が採れる季節。野菜や果物は、年中採れる様になったとしても、今の時期には敵わない。
地下基地には、隊員がそれぞれに管理する施設がある。基地の中にある科学者のラボを筆頭に、隊長のガンプラルーム、戦士の武器庫、格闘家のトレーニングルーム。そして、暗殺者に与えられたのは、菜園だった。
先程、記述した通り。今の季節は、秋。収穫の時期である。
篭一杯に野菜を乗せ、真っ先にドロロが訪れた場所。
金に近い長い髪に、少し痩せた体を隠す白衣。ラボの中に居るからか。大きめの薄手のトレーナーに、下はレギンスを穿いている。靴はいつものブーツでは無く、黄色のスニーカー。
「それ、何?」
「野菜でござるよ?」
「いや、見れば解る」
「たくさん収穫出来たでござるから、クルルくんに何か作ろうかと思って」
迷惑だった?──と、訊けば、少女は表情を崩さず奥の部屋へ向かう。
追い出さないと言う事は、迷惑では無いと言う答えだ。言葉では無く、態度で示される返答に慣れたのは、いつの頃だったか。思い出と言うには、もしかしたら充分なのだろうと、ドロロは小さく笑った。
向かう先には、簡易キッチン。

「クルルくんのキッチンって、調味料の類いは結構揃ってるんだよね」
持ってきた野菜は、シンクで良く洗う。
簡易キッチンとは言うが、普通のキッチンと変わりはしない。もう少し手を加えれば、業務用になるかも知れない。
持ってきた野菜は、俗に言う秋野菜と呼ばれるもの。
「さて、どんな料理にしよう…」
偏食の激しい少女は、メニューを考えるのに一苦労。
知り合ったばかりの頃は、自分や幼馴染みの作った物は、一切口にしなかった。何とかして食べさせようと、ドロロはクルルの好きなカレーを何度も作り、事ある毎に食べさせたのだ。
後日。ギロロの兄であるガルルから聞いた話では、滅多に食べようとしないクルルが、残す事無く食べたのは驚きだったらしい。
ゆっくりと根気良く食べさせ、抵抗無く食べる様になるまでに、三年は掛かった。
「…そっか…考えてみると、睦実殿は凄いでござるな」
自分が三年も掛けた事を、少女の相棒は数時間で成し遂げたのだ。
気付いた事実に、打ちのめされそうになるが、ここでトラウマスイッチは入れられない。
「うぅ…睦実殿は睦実殿…僕は僕だよね…うん」
無理矢理に浮上させると、意識を別方向へ向ける様にする。逃げだと思われそうだが、スイッチが入るよりは幾分かマシだろう。
「メニューは…少し気温が落ちて来たから、けんちん汁。あとは、天ぷらと煮物にしようか」
炊飯器を開ければ、空の釜が挨拶をする。使った形跡か無い所から、何日か食事を取っていない。もしくは、栄養補助食品しか食べていないと解る。
「食べなきゃダメだよ…」
米びつから米を取り出しつつ、暗殺者は呟いていた。

ラボには、幾つか部屋が設置されている。メインは、入口から入って直ぐにあるディスプレイ。そこから左手の奥に、作業室があった。
『クルルくん。ご飯出来たから、出て来てよ』
「…後で食う…」
『…解ったよ。けど、絶対食べなきゃダメだよ』
音声通信が途切れると、片隅に追いやられている小型ディスプレイのスイッチを入れる。
映し出された映像は、丁度、暗殺者がラボを出て行く所。それを見送り、一つだけ吐いた息は、どこか重たく感じた。
着崩した白衣を脱ぎ去り、作業室を出る。
簡易キッチンに行けば、出来立てと言わんばかりの料理が、テーブルの上にて湯気を立てつつ、クルルを出迎え。炊飯器を開ければ、白く立ち上がった米が艶やかに食されるのを、今かと待ちわびている。
「天ぷらと煮物に、汁物と飯ね…あの人。本当に暗殺者か?」
椀にけんちん汁を入れ、茶碗に炊きたての米をよそう。
二つをテーブルに並べ箸を置けば、食事の準備は完了。
手を合わせれば。誰も居ないが、挨拶はしていた。
「いただきます」

数日後。
ドロロの持つ篭には、先日と同じく一杯に作物が盛られている。ただ、種類が野菜から果物に変更されてはいたが。
ラボの前に立ち、いつもの様に呼び鈴を鳴らす。不快感満載なそれは、何度聞いても慣れないもの。
するりと、素直に開いた扉に内心驚きつつも、緩む顔を叱咤しながら中に入る。
「今日は、果物かィ?」
「そう。クルルくんは、甘い物は苦手でしょ?けど、ジュースなら良いと思って」
数日前を思い出すように、ドロロはキッチンを借りる旨を示す。すると、クルルはリモコンのスイッチを押した。
テーブルには、一本の包丁。柄の部分に、ドロロの名前が入っている。後ろには、当然の如くクルルズラボのマーク。
「これ…」
「単なる気紛れだぜェ」
メインディスプレイに向かい、キーに滑らす指。それは、ほんの数ミリだけ動揺が見られた。
言葉にする事は少ないが、態度ではきちんと示すのが少女流。
「有難う。クルルくん」
「…チッ」
「あ、そうだ。これ──」
「ク?五円?」
手渡された日本通貨の五円玉。
疑問符を散らしていると、暗殺者からの講釈が入る。
「日本ではね。贈り物で包丁を贈られたら、五円玉を渡す風習があるんだって」
「なんで、五円?」
「包丁は、刃物でしょ。縁を切るとも言われるから、贈られた側はそうならない様に、縁を返す──『ご縁』があると言う意味で、五円玉を渡すらしいよ」
「単に迷信だろ?」
「迷信でも、侮れないよ」
機嫌良く、ドロロはキッチンへと戻って行く。
彼の後ろ姿を見ながら、視線は自然と手渡された五円玉に向いた。
「『ご縁』があります様に…か」

正月でも同じ事を言うのだろう。

~fin~

暗殺者。少女専属調理師への道。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「……!?」

二周年記念、と、サプライズで、いただいてしまいまし、た……?!

「ど、こ……コレは、夢か……!」

ぎゅー……。

「……多分痛い。夢ではない!」

そんなことをしていたのは、川谷です(痛々しい人間)。

その上、ドロクルなのですよ?!

女の子設定クルルでドロクル――ど、どうしましょう?!(動揺)

ま、まずは……HAL様、本当に、嬉しかったです!ありがとうございます!!(見苦しい動揺ぶり)

ドロロが頑張っていて、川谷はそんなドロロに好感をいだきました。睦実君と己を冷静に比較、考察。落ち込みそうになりながらも踏み止まった彼に、祝杯を!

 

繰り返しになりますが、HAL様。

サプライズと、沢山の温かいお言葉、本当にありがとうございます。

この気持ちを小説という形でお伝えできるよう、これからも精進を続けていきたいと思います!

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『有限と微小のパン』さまからいただいた企画小説

【とある恋愛指南書】




当たらずも遠からず──。


鬱陶しいの一言で済むのであれば、今の苦労は無かったのかもしれない。
休日の昼過ぎ。
仕事が休みの秋が、何日か振りに地下から上がって来た科学者の少女と、その親友を捕まえた。
昼食を一緒に食べよう──と、言われたそこまでは良かった。だが、その後が、少女にとっては誤算でしかない。
「はい。珈琲どうぞ」
「ん、」
「有難うございます」
それぞれのカップには、好みの苦さにした珈琲。
キッチンを背にして秋が座り、向かいにクルルとモアが座っていた。
今日の少女の髪型は、ロングの長い髪の先を横にカールさせた状態。服装は、家にいるからか。幾分ラフに決めている。ボトルネックのグレイのニットセーターと、黒のジーンズだ。
チョイスしたのは、勿論だがモアである。
「クルちゃんのそのセーターなら、短めの明るい色のスカートも似合うわね」
「幾つか候補はあったんですよ?てゆーか、指名制度?」
「モア、言葉がおかしい…」
呆れ気味に呟く少女。
珈琲を出されたくらいから、何となく感じていた事。
編集者の眸が、著しく輝いて見えるのだ。この状態の秋が非常に危険な事を、クルルは経験上熟知している。しかし、逃げようとしても逃げられないのが、おそらく現状で現れていた。
何しろ、隣に居るモアも同じ状態なのだから。
「…なんだよ…」
「クルルさん。やっぱり、明日着ていく服。買いに行きませんか?」
「はァ?」
「あら、明日。どこか行くの?」
「はい。私とおじ様。クルルさんと睦実さんで、一緒にお出掛けするんですよ」
「じゃ、Wデートね♪」
ウキウキと話を進める二人を見ながら、無意識に溜め息が出てしまうのは否めない。
前からそうであるが、クルルはとにかく「女の子らしい事」が、極端に苦手である。髪型から服装、仕草にいたるまで。どこがどうとは言い難いが、何よりも避けて通りたくなる。
そして、現在。秋とモアのしている「恋ばな」と呼ばれる話を、一番苦手としていた。
楽しそうに話す二人を見つつ、何とか逃げ出す事はしていない。逃げ出さないだけ、己は成長したものだ──と、科学者の少女は心の中でひとりごちる。前までならば、始まった瞬間に逃げていただろう。
「…それもこれも、アイツが悪い…」
「?クルルさん。どうかしましたか?」
「…別に…」
そっぽを向くクルルに、疑問符を散らすモア。秋は、小さく笑いながら少女に眸を向ける。
態度は悪いが、顔がほんのりと赤い所を見れば。単に照れているだけと、判断は出来る。
「クルちゃん」
「何だよ?」
「睦実くんに感謝しなくちゃね」
「クル!」
「ママさん。どういう事ですか?てゆーか、興味津々?」
「つまりね。今の可愛いクルちゃんを見れるのは、睦実くんのおかげ──って、事よ」
「あ!そうですね!」
「な!!か、かわ──」
いっそう顔を赤くする少女は、普段からは考えられないくらいに狼狽した。それでも編集者は、攻撃の手を緩めはしない。
「あら。今のクルちゃんは、可愛いわよ?」
「はい!私、睦実さんが羨ましいです」
「でも、モアちゃんには、ケロちゃんが居るでしょ?」
「おじ様は格好良い方で、クルルさんは可愛い方です!」
きっぱりと言いのける辺り、モアらしいのだろう。
純真無垢が服を着て歩いているような親友は、科学者の少女に無いものを持っている。だが、それは逆もしかりだ。
二人を見る秋の眸は、どこか娘を見るものに変わる。既に一人、娘が居るのだが。クルルもモアも、夏美とは別の反応を返してくるのだから、面白い。
「モアちゃんは、ケロちゃんが大好きですものね」
「はい。そして、クルルさんは睦実が大好きなんですよね?」
「さァ?」
「あれ?違いましたか?」
「大丈夫よ。睦実くんの方が、クルちゃんに惚れちゃってるから♪」
口を着けたカップから、珈琲を吐き出しそうになり、クルルはぐっと堪える。ようやく落ち着き、視線を秋に向ければ、笑顔の編集者に返り討ちにされた。
「好きでなければ、クルちゃんは睦実くんをラボには入れないでしょ?」
「……」
図星である。
会いたく無い者に対しては、ぞんざいな扱いをする少女だが、睦実にはそうした行為は一切無い。因みに、クルルにぞんざいな扱いをされるトップは、モアの想い人だ。
自分が不利なのも、充分理解している。不機嫌な表情を見せても、秋とモアには効き目は無い。
一つ溜め息を吐くと、カップに入っていた珈琲を、一気に煽った。女性らしさの欠片も無いが、これがクルルの良さだ。
テーブルにカップを置き、少女は立ち上がる。
「クルルさん?」
「行くんだろ?」
「え?」
「買い物」
足は、既に玄関に向けて歩き出していた。慌てる様に、モアも立ち上がる。
「行きます!待って下さい!」
「早くしなァ」
「二人共。暗くなる前に帰って来てね。晩ごはんは、何かリクエストある?」
掛けられた声に、二人の少女は顔を見合せ声を重ねた。リクエストは、唯一つ。
「「カレー」」
「解ったわ。行ってらっしゃい」
見送る秋に、手を振りつつ返しの言葉を告げれば、そのまま街へと歩を進めた。
空は快晴。
薄雲に、空は高くなる。
秋風に優しく吹かれながら、恋の話を致しましょうか。


いってきます──。














~fin~

編集者。二人の恋を見守る者。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

『有限と微小のパン』HAL様の60000hit達成企画に、ずうずうしくも参加させていただきました!

『クルル(女の子設定)&秋ママ&モアちゃんの恋愛話』

秋ママの、余裕を持った対応に憧れを抱きます。モアちゃんの、真っ直ぐな言葉の1つ1つに、惹かれて止みません……。

そして、クルルの動揺が、可愛らしすぎてどうしたらいいのか……!(『触るな危険』)

秋ママとモアちゃんのペアには、クルルも敵いませんね(笑)。

HAL様、我侭なリクエストをこのような素敵なお話にしてくださり、本当に嬉しかったです!

 

以下。

小話をひとつ、そっと――――。

 

『シェルター・ルームの傍にはいつも』

「……え?」

「何だよ」

「いや、嬉しいケド……どうしたの、急に」

「……知るか。モアに訊け」

ぶっきらぼうを装った声は、やや低め。それはクルルなりの照れ隠しなのだろう。

でも、そんなことは指摘しない。

(ま、からかうのもいいんだけど……)

悔しそうな顔もかわいいから見たいかも――という、自分の小さなサディスティックな面を見ない振りで、代わりに小さく口の端を持ち上げる。

「……来週の水曜日?」

「……」

「でも、Wデートなんて初めてだね」

「……」

Wデート。

2組のカップル、つまり4人で出掛けたり、遊んだりすること。

今の場合は、ケロロとモアちゃん、俺とクルルの4人ということになる。

何でも、前々から先延ばしになっていた『一緒に何処かへ行く』という約束を、ついにケロロが守ることにしたらしい。

そして、モアちゃんはクルルと俺を誘った。

ケロロと2人きりじゃなくて、4人で出掛けたいとクルルに言った、らしい。

(……クルルは、モアちゃんが好きだからなぁ……)

モアちゃんがクルルのことを慕っているのは、多分分かり易い。でも、クルルだってモアちゃんのことを気に入っていて、とても大切に思っている。

モアちゃんとケロロの『約束』は、何度も何度もケロロからも『また今度』で先延ばしになって、その度にモアちゃんがやって来るのは、この場所だった。クルルは、モアちゃんを拒まない。モアちゃんが落ち込んだ日には、一緒にここで眠っていた。

「……映画、見るんだっけ?」

「……らしいな」

「――――ね、クルル」

「あ?」

――――確信していることが、ある。

ケロロが今、急に『約束』を果たす気になった裏には、確実にクルルが絡んでいるということ。

多分、何か言ったのだろうと思う。

基本的にそういったことに口出しをしないクルルが出て行くくらい、そろそろ限界だったということなのだろう。

(――――まあ、今は関係ないか……)

とりあえず、4人でデートをすることが決まったのだ。

モアちゃんにとってもクルルにとっても、それでいいのだろう。

「……睦実、」

「ね、折角だからモアちゃんとペアルックでも着てみる?」

俺が揃えるよ、なんて、話を逸らせる為に言った台詞は案外本気だったのだけど、鼻で嗤われた。

「モアちゃん、喜びそうだけど?」

「誰が着るか」

 

《終わり》

手負いの娘がいきつく場所

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サブクルスキー様から頂きました!

めまいがする。吐き気がする。頭の中がぐっちゃぐちゃです。
毛むくじゃらの手が頭の中をぐるぐるかきまわしてるみたいに気分が悪い。きっと顔色だって悪いはずなんです。
 それなのに特訓だとか言い出す赤に腹が立つ。
「タママくん、具合が悪そうだから、また後にしたら………」
言うだけ言って一喝されるとすぐひく青いのもムカつく。
いい人だと思われたいだけの言葉なんかいらないんです。
「大丈夫?大丈夫?」
ことあるごとに聞いてくるのもイヤなんです。
 本当に大丈夫ならいつものラブリーフェイスでいるというのに、ふらふらしてるんだからつまり具合が悪いってこと。
わかってないはずないのに。
 赤にも嫌われたくないし、僕にも嫌われたくない。両方にいい顔して両方に無視される。
あの人のトラウマは自業自得なんです。
 みんな嫌い、みんな嫌い。
みんな毛むくじゃらの腕に胸をひきさかれて胃をひっくりかえされてごしごし洗ってもらったらいいんです。気持ち悪い。吐きたい。
まるで胃の中に重い石でも詰め込まれたみたいに気持ち悪い。
ひっくり返して洗い流してしまいたい。でも出来ない。このまま生きるしかない。あームカつく。大嫌い。
 軍曹さん以外のケロロ小隊は、あの女も含めてみんなみんな大嫌い。
とくに黄色が大嫌い!
 特訓が終わってラボに乗り込んでやる。叫んでやる。
「薬よこせや、ゴラーーーっ!」
 奥のイスでふんぞりかえって黄色いは鼻をほじってた。
あの手で薬を調合する気なんですか?やっぱり黄色がいちばん嫌い。
 大嫌い!

 のしのし足音がするんじゃないかという勢いでラボにはいってきたタママはソファにどっかと座りこんでクスリ!クスリ!と喚いている。
 ラボの主は一応手を洗ってから用具一式もってタママの正面に座る。
「はい、あーん」
 言うまま素直に口をあける。炎症はおこしてない、合格。眼球の血管、耳の穴も見る。とくに腫れてない。
「症状は?」
「吐き気と頭痛」
「内臓かねぇ~」
「いいからクスリ下さいよっ」
「血液検査が終わってからにょーん。はい腕だしてぇ~」
 素直に腕をのばす。いつもこれだけ素直ならいい。
だがいつも素直なタママはタママではない。
 細い容器に血液をつめて検査のための機械にいれる。
結果はすぐにでるだろう。
 この隙に聞きたいことを聞く。
「プルルの奴なんか言ってたか?」
 ソファにころがって、だるそうにタママは応える。
「クルル先輩は金持ちだって言ってました」
「は?」意味がわからない。
「クルル先輩はケロン星で特許やらなんやらもってるからお金に困ることないけど、僕はもうすぐ保険がきれるから決断しなさいって」
「あー………」意味がつながった。
「僕みんな嫌いです。ロギー先輩も泥沼先輩もオバサンも、あの女も。みんなみんな大嫌いです」
「ふー…ん」
 そんな告白されても困る。
「でもだれよりクルル先輩が大嫌い!」
「そらぁ身に余る光栄って奴だなぁ。くっくー」
「大嫌い!」
 もういちど言い放ってソファに沈み込む。熱くにじむ瞳をこぼさないようにタママは拳で顔を覆う。
「たしかに未分化のまま仕事をするなんて難しいです。タルルは僕より年下なのにちゃんと決断しました。未分化なんて、男でも女でもない状態なんて精神的に落ち着かないし、体の中も不安定で障害が残りやすいって知ってます。保険もきれるし、さっさと決めなきゃいけない時期がきてることはわかってるんです」
 クルルはなにも言わず機械のなかの赤いそれを見ていた。
「女になったら前線兵として使いにくくなるのはわかってます。筋力も体力も落ちるでしょう。でも男になったら僕はますます軍曹さんに相手にしてもらえない」
「女だから相手してくれるってもんでもないだろ」
「でも男よりずっと可能性があるでしょう!僕は軍曹さんとラブラブになりたいんです!!」
「だからぁ~、女になったからラブラブってわけでも」
「そうですっ!女になって相手にされなかったら使えない前線兵がひとりぽつんと残されるだけなんです」
 男になればケロロはタママを弟分として可愛がってくれるだろう。だが女になれば、それとなく距離をとらされるかも知れない。
 そんな画が至極簡単に浮かんでしまう。
「どっちにしたって茨の道ってか?くくー」
「決めることなんて……」
 結局いまのまま、性未分化のまま笑ってケロロのあとを追いたいとタママは望んでいる。
「ギロロ先輩やドロロ先輩が僕のこと心配してくれてることだってわかってます。僕は前線兵だから未分化のままでは辛いだろうって、教えてくれてるんです。直接言うと僕がスネるのはわかってるから、特訓なんてやり方で諭してくれてるんです。プルルちゃんだって心配してるから、あんな厳しいことを言うんです……」
 ケロロとの付き合いが長いからこそ、タママの想いが届くと思えないのだろう。
「それなのにクルル先輩がまだ未分化だからっ!!
バカじゃないんですか。地球人が相手なんて、男とか女とかそんなこと以前の問題ですよ。うまくいったって地球人なんてすぐ死んじゃうのに」
「…………」
 クルルはやはりなにも言わなかった。検査の終わった機械をぼんやり眺めながら事務的にスイッチを押していた。
「クルル先輩のせいで、僕はこの恋を諦めきれない………」
 だから いちばん だいきらい
もういちど呟いてタママは体を起こした。正面にいた黄色はできたばかりの薬を注射器にセットしてタママの腕をゴムロープでしばった。血管を浮かせる。
「弁当って1こ作るのも2こ作るのも手間かわんねぇんだって」
「は?」意味がわからない。
「1人分のおひたし作るのも2人分のおひたし作るのも変わんねぇだろ。だから1個つくんのも2個つくんのも手間かわんねぇんだって」
「あー………」意味がつながった。
なにもかも。タママは鼻を鳴らす。
「自分の分の薬つくるついでに僕のも作ってくれるってわけですか」
「手間かわんねぇーし」
「でも僕はクルル先輩なんて嫌いです」
「好かれたくて言ってんじゃねぇ」
 そう。
愛してもらいたいわけでも、許してもらいたいわけでもない。
 そういうんじゃない。
「はー………」
 薬を打った途端、体が軽くなる頭もすっきりする。ラボのモニターには家事から解放された愛しい人。
「軍曹さんと遊んできます」
「あいよ」
 痛みと吐き気から解放された子供。足取りも軽く駆けだす子供。
 仲良くしたいわけでも傷を舐めあいたいわけでもない。
夢よりも素敵なことがあると信じていたいから。
 タママはケロロに抱きつき、クルルはラジオ局入りを報告してくるメールを今か今かと待っている。
夢いじょうのことを実現できると信じている。
 それは思うほどおかしなことじゃない。

なぁ、そうだろう?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

サブクルスキー様から頂いたタママとクルルの真剣なお話です。

クルルが『だいきらい』だと言うタママが、何だか一杯一杯なこどもでいいなぁ……と。第一印象は、その部分が一番強く残りました。

個人の趣味の話をさせていただくのならば、川谷はこういった性別の設定は大好物です。

一度選んで、気に入らなかったら別の方を選び直す、なんてことは出来ない。だからでこそ、もしどちらかを選ぶのであれば後悔しても進んでいく覚悟もしておかなくては、自分が辛くなる。

拝読させていただいて、改めてそんなことを考えることができました。

改めまして、サブクルスキー様、この度は素敵な小説をお迎えさせてくださり、本当にありがとうございました!

 

以下、勢いで書き上げた小話をひっそりと……。

『羨望も同情も、こんなにあたたかいのに』

「タママ君のこと、聞いたわ」

「あっそ」

そっけない答えはいつも通りだから、気にならない。かちゃかちゃとずっと機械を弄っているこの子は、今日も相変わらず顔色が悪そうだった。

「それはそうと、ちゃんと寝てる?」

――返事、なし。

これに乗って話を続けるようだったら、これ以上『未分化』の件には触れないつもりだったのに。この子は、ずっと黙っている。

(……もしかしたら、ひょっとして)

――訊いて欲しいのかしら?

そんな考えが浮かんで、すぐにそれを否定する。

この子は、分かっている筈なのだ。自分が『未分化』で居続けるという選択肢を奨励していないことを。

「……クルル君」

「……」

「ずっと、タママ君に薬を作ってあげるつもり?」

「……」

答えない。でも、私を追い出そうともしない。

いつの間にか傷だらけの手には小さな機械が組み立て上げられていて、それをこの子は引き出しに仕舞いこむ。小さなペンのような形をしていた。それを仕舞いこむこの子の表情が、私の言葉を奪い取る。

「……で、」

「……」

「まさか、ガキのことを訊きに来ただけじゃねぇだろ」

「……ええ」

「用件さっさと言え。で、お帰りはあちらぁ~」

「…………全く」

相変わらずね、と溜め息付きで呟けば、やっぱり嗤うだけ。

この子にとって、胸の内を言葉で伝える相手は私じゃない。それは理解していたはずなのに、私は相変わらず間違えてばかりいる。

口実で持って来た本部からの資料を渡して、私は何もできないまま、帰るしかない。子どもは、振り返ることさえしない。

長い廊下に出て、溜め息を吐いて。

毎回こんな調子なのに、私は懲りずにまたここを訪れるのだろう。

(だって、)

――あの子たちの考え方は、どこまでも『私』を否定するから。

多分、心配しているという気持ちも本物で。でも、それ以上にあの2人が可哀想で、腹立たしいのだ。

見ていて痛々しい。

そんなに『未分化』な自分で居たいのなら、他人に気付かれないくらい完璧に立ち回って欲しい。それもまた自分の勝手な希望ではあるが、この世界にいるからにはそれくらいのマナーを守って欲しいものだ。

体の不調や、どうにもならない心の不安定さから八つ当たりをしてしまう、あの小さな新米兵士はなおさら。向こうもあの苛立ちにはどう対処したものかと困惑しているのだろうが、周囲にとっては迷惑極まりない。

(……私も、人のことは言えないけど……)

――――選んでしまった性別に、後悔はしていない。

それでも、ふとした時。『もしも』の世界を思い、何度も何度も空想の種にする。

そんな自分を誰よりも嫌っているくせに、誰よりもそんな自分に執着している自分を思い知らせるから、イヤなのだ。

あの青くさい、幼い子どもたちの存在を見ていることが。

《終わり》

なら、見なければいいのにね……。

 

プルルちゃんを思わず……申し訳ありません……。出来心で、我慢がききませんでした!

小話というよりも、頂いたお話の川谷的印象集合体(もちろん造語です)のような呟きを思っていただければ……。

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『カレー博士(||@=@||)のひみつきち』つゆくさZ様より

Kululukog

 

恐れ多くもお嫁にいただいた相互記念リクエストイラストです!

クルル子ちゃんですよ、クルル子ちゃん!(しつこい)

繊細な印象を受ける淡い色彩と線の細い輪郭に、川谷は心の底から憧れております!クルル子ちゃんのふわふわの巻き毛が特に……こんな美人さんが街中を歩いていたら、おそらく沢山の方々は振り返るのでしょう!

つゆくさZ様、我侭なリクエストに快く応じてくださり、本当にありがとうございました!

未熟で色気の足りないブログサイトではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

以下、思わず書いてしまった川谷の救えない小説です……。

 

『マイ・フェア・レディーズ』

化粧をしてカツラを被って、口調もいつもとは変えて。

セーラー服のスカートは短く。眼鏡だって、違う。

「随分と可愛らしくなっちゃったね」

いつも可愛いけど、今の姿は通常とは違うベクトルで『かわいい』ね、と。

そのまま口付けようとしたら、白い手袋をはめた手で阻止された。

「口紅が落ちちゃうから」

いつもより、声が高い。多分裏声を使っているんだろうな――とか。そんなコトを思いながら「残念」と呟くと、彼女は小さく嗤う。

「それに、貴方は――」

「?」

「いるんでしょ?いいひとが」

だからダメ、と、嗤う。

一瞬、その言葉の意味を考え直して合点がいった。

「うん、いるよ?とびきりの恋人が」

可愛くて、いつだって一緒にいれば退屈しない。

とびきりの、大切な恋人。

目の前の彼女は、楽しげに目を細めてわらう。

亜麻色のふわふわとした髪が揺れて、嗅ぎ慣れたシャンプーの甘い香りがする。あの夜空に浮かぶ月色の髪とは違う、色。それなのに、その甘い香りは変わらない。

何だか可笑しくなって、自然と口元が緩んだ。

「――ねえ、クルル」

「私はクルルじゃないわ」

「クルル子ちゃん。あのさ、クルルが帰ってきたら伝えてくれるかな?」

「あら?こんな美少女に伝言役なんてやらせるつもり?」

そう言う彼女は、やはり楽しそうだ。

「クルル子ちゃんとクルルへのお誘いだから、さ。今晩、一緒にカレーライスを食べよっか」

それ以上の下心は口にせず。

でも、どうやら彼女――――彼女『たち』には、ばっちり受信されたみたいだ。

多分、相手は無意識なんだろう。ほんの少し後ろへ後ずさった彼女を追って、手を伸ばす。

頬を包み込むようにそっと両手で触れると、釣り上がり気味の両目が大きく見開かれる。

「待ってるね」

そう言って、不意打ちのキスをした。

 

《終わり》

ごめんね、我慢できなかった。

 

……調子に乗りました。出来心です!

とても楽しかったです……!(おそらくサブクル)

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『有限と微小のパン』HAL様から50000hit達成企画でリクエストさせていただきました!

【水園遊戯】

水が煌めき、光が踊る──。

「クルルせんぱ~い!泳ぎましょうよ!」
「却下」
現在、ケロロ小隊とそのパートナーたちは、西澤家にあるプールに来ていた。
切っ掛けはお約束な、暑いと喚く小隊長。二等兵が令嬢をオカルト少年で釣り、プールを解放させたのだ。
外からの光が射し込むプールサイドにて、リクライニングに体を預けパソコンに勤しむ少女に、少年が喚くも綺麗に流される。
端から見ても、二人のやり取りは微笑ましいし、絵になるのだ。
パラソルの下。だるそうに体を寝そべらせ、大きく少女──クルルは溜め息を吐く。
「只でさえダルいのに、何でもっとダルい事しなきゃなんねェ~んだィ?」
「楽しくないですかぁ?」
「どこがァ?」
「全部!」
「ガキ…」
一蹴にして伏せられれば、格闘家は憮然とした表情。
いつもは、地下基地にあるラボから滅多に出る事の無い科学者だが、無理強いの様に引っ張られてのプール参加。それでも水に入らず、プールサイドで愛用のノートパソコンを弄るのは、きっと最後の抵抗か。
女性陣にしてみれば。何より気になるは、少女の肌の色だろう。
解ってはいた。
理解もしている。
実際に間近で見ると、その白さは羨ましくあるのだ。
「ホント。白いわよね」
「う、羨ましいです…」
「真っ白ですね~」
「てゆーか、美人薄命?」
「…モア。"はく"の文字がちげェぞ…」
「え?じゃぁ…色白美人?」
「既に四文字だけに、重点がおかれてやがる…」
着替えの時は、視線が痛かった。
着替えるだけで疲れた──とは、後にクルルが口にした感想。
クルルの傍には、必ず誰かしら存在を主張する。特に多いのは、仕事を共にする恐怖の大王か、科学者の相棒だ。
今日は、珍しくタママがクルルの傍を陣取っている。
プール内では、冬樹が桃華とケロロに泳ぎを教わり、ドロロと小雪は水練なのだろう。忍者の修行をしていたり、ギロロは端から端までを何度も往復している。夏美とモアと睦実の三人は、それなりにプールを楽しんでいた。
「おめェも行けばいいだろォ?」
「ボクは、クルル先輩と行きたいんですぅ!」
「却下」
彼女の着る白いパーカーの下は、勿論、水着なのだが。実は、ある一人を除いて、クルルの水着姿を誰も見た事が無かったりする。
「ククッ…タママ。本心を言ってみなァ?」
「え?…えっと…」
中性的とは言え、綺麗な顔で迫られれば、多少は口が緩むのは性であるか。
後輩同士と言えど、少々気を揉むのは保護者意識の現れであろう。
小隊長は知られぬ様に、遠目から二人を見やる。
彼の傍では、顔を着けていた水面から、冬樹が上体を起こす。
「仲がいいよね。クルルとタママって」
「そ、そうですね」
頬を赤らめつつも微笑む桃華と、解っていない冬樹。
ケロロは、色々な意味を込めて溜め息を吐いた。
「おぉ~い。どー思う?」
音に還すと、反応した様に直線に泳いでいた赤い影が、進路を変えて近づく。同時に、静かに浮かんで来る青い影も認識。
二人は、同時に顔を上げた。
「きっと、見たいんだろうな」
「タママくん。粘るね」
「…まぁ、我輩たちも同じでありますか…」
上着に着ているパーカーの丈から、すらりと伸びた白い足は魅惑的だ。
因みに、三色の機嫌が下降気味なのは、クルルの着ているパーカーが睦実のものだから──らしい。
ジト目の視線を綺麗に無視してるのが、パーカーを着せた本人の睦実。夏美とモアに至っては、気付いていない。
「クルル。観念したら?」
「イヤだ」
どうしても、水に入りたく無いのか。断固として、パーカーを脱ぐ事を拒否する科学者。
相棒の芸能人は、ただ笑うのみ。
潜水をしていた小雪が浮かび上がり、浮き輪に座り浮かんでいた夏美を驚かした。
拍子に、バランスを崩した夏美をモアが手を貸す。
「あ~、ビックリした…」
「ご、ごめんなさい…」
「私も、ゴメンね」
「てゆーか、油断大敵?」
三人は、顔を見合せ笑い合う。
どこにでもある風景。
未だに、少女は拒否し続ける。
睦実はちょっと頭を捻ると、タママを呼んで耳打ち。
内容が気に入ったのか。可愛らしい少年に、似つかわしく無い黒い笑み。
「クルル先輩!パソコン没収!」
「なっ!テメェ!」
クルルからパソコンを奪い取ったタママが、睦実が休憩に座っているプールサイドのギリギリまで逃げて来る。当然、科学者は格闘家を捕まえ様と、そこまで歩を進ます。
触れるか触れないかの所で、タママが避ければ。プールサイドに座っていた睦実が、捕まえ様と伸ばされたクルルの腕を取り、そのままプールへ一直線。
「クル!ちょ、まっ!──」
パーカーと眼鏡とヘッドホンを着けたまま、科学者はプールへ落とされた。
パソコンを抱えたまま、動向を見守っていた少年は青ざめる。せめてもと、奪った少女のそれを椅子へ返した。
「睦実…何しやがる…」
「まぁまぁ」
「おい、ガキ。解ってんなァ?」
振り切れる程に首を振ったのは、もしかして初めてかも──と、タママ少年は思ったらしい。
その後。濡れたパーカーを脱いだクルルの水着姿は、黄色に白のリボンが全体に走り、胸の中心にオレンジのリボンが着いたセパレートタイプの物だった。
睦実が選んだの物だと、言うまでも無いだろう。

ある夏の一コマ──。

~fin~

二等兵。珍しく曹長に絡む。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

『有限と微小のパン』HAL様の50000hit達成企画でリクエストさせていただいた、『タママとクルル中心の、皆がプールではしゃぐお話』です!!

睦実君、グッジョブ。セパレートタイプの水着を選ぶとは、素敵ですよ。

タママと睦実君がさり気無く、お互いの利益のため(?)に共謀しているところが、特に大好きです!(そして、保護者で男の子な3人も好きです)

HAL様、素敵なタママ、クルル、睦実君の小説をありがとうございます!!

 

 

[以下、思わず考えてしまった場面の走り書き注意報]

『自惚れでも無く』

「こっちかこっち、どっちにする?」

「……捕まれよテメェ」

「キャミソールみたいな形もあるけど、それは去年買ってたよね?だから、他のヤツがいいと思ったんだけど?」

右手には、ピンクと白と赤のワンピースタイプ。

左手には、白とオレンジと黄色のセパレートタイプの水着を持って、あくまでも爽やかな笑顔を崩さない。

女性用水着売り場(なお、夏休み特集ということで設けられている特設ブースである)で、あろうことか女性の水着を両手に持ってここまで堂々としていられるという男も、そういないだろう。

(つーか、何でまた水着なんざ買わなきゃならねえんだよ……)

『西澤家のプールへ遊びに行きたい!』と言ったのはケロロたちであって、そこに自分は含まれて居ないはずだ。行きたい、なんて一言も言っていないのに、いつの間にか頭数に入っていた。

「クルル?」

「あー?」

「……やっぱり夏美ちゃんたちと来る方が良かった?」

「……水着自体、いらねえだろぉ?」

「でも、夏美ちゃんも小雪ちゃんも、モアちゃんも、それじゃ納得しないっしょ」

――そうなのである。

あの女たちに加えて、今回は日向冬樹目当てのはずの西澤桃華も、『西澤家には、一流のファッションデザイナーたちがおりますので……』などと言ってきて、危うくオーダーメイドの水着を着せられる所だった。

(着せ替え人形なんざ、冗談じゃねえっつーの)

そもそも、体つきは去年と大して変わらないのだから、去年不本意で買った水着で充分だと思う。

不参加を認めろと言いたいが、もうそこは面倒くさいので諦めた。

「――――大体、なんでお前が選んでんだよ」

「え?」

「別に」

聞こえなかったなら、それでいい。繰り返す程のモノじゃない。

周囲から見れば、男2人が女の水着売り場をうろついているように見えるのだろう……なんて、どうでもいいことを考える。自分を女だ男だといちいち気にしたことも無いのだから、本当にどうでもいいが。

「――――あのさ、」

「?」

 

「クルルの似合うものが1番分かるの、俺だ、って――」

 

「――――っ……!」

……顔、が。

顔が、近い……。

「――これには自信あるよ?すごく、ね」

――――こういう時。

コイツは、すごくムカつくわらいかたを、する。

自分のような嗤い方とは、180度違う、わらいかた。

「ちなみに、これは俺からのプレゼントってことで」

どうせだし、どっちも買っちゃおっか、と言いながらどちらもカゴの中に入れる。

「……2着買ってどうすんだよ」

「少なくとも、俺とクルルは2回以上海かプールへ行くってことで」

「絶対嫌だね」

――水着というものはそこそこ値が張るというのに、高校生の分際で本当に2着とも買いやがったコイツは、やっぱりすごくムカつく。

 

 《終わり》

買い物はむしろ堂々と。

 

 

……調子に乗りました!

書かずには居られなかったのです……!!(見苦しい言い訳)

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『有限と微小のパン』HAL様から頂いた『裏企画』リクエスト小説

『有限と微小のパン』さまで開催された『裏企画』で恐れ多くもリクエストをさせていただき、掲載させていただけることになりました!『裏企画』ということで、性描写が含まれます。OKな方のみ、スクロールを!!

 

 

【現在銭湯中也】

気分は気分として──。

少女の居城であるラボには、色々な物がそこここに転がっている。
とある部屋──秘密部屋とも呼ぶが──には、広いキングサイズのベッドの他に、別の小部屋があった。開ければタイル張りの浴室。
バスタブは、少し広めに取ってあった。
「じゃ~ん!」
「クぁ?温泉の素?」
「白色の湯・真珠エキスだよ」
「真珠エキスって…」
「貰い物なんだけどね。どんなのかな?──って、思ってさ」
嬉々として粉末状の温泉の素を入れ、湯船を掻き回す。ある程度混ぜると、乳白色の湯へと変わった。
急き立てる様に睦実は、クルルの服を脱がそうとする。
「ちょー待て!何でお前が当然の様に脱がすんだよ!」
「え~。ダメ?」
「お前、馬鹿だろ?」
「クルル馬鹿ではあるね」
「認めんな…」
ダボダボの灰色のTシャツは、丈が膝上まであるもの。腰には遊びの様にベルトが飾り、下は黒のレギンス。いつも履いているショートブーツは、橙色と黄色のスニーカーに変わっている。
この出で立ちは、ラボに居る時のクルルの基本形。
髪は、助手のモアが帰省中と言うことで、簡単に束ねてアップしているだけだ。
「…お前も入るのか?」
「モチコースにね♪」
「あ、そ」
盛大な溜め息を、これ見よがしに吐いたと言う。

長い髪を上に上げると、白いうなじがまざまざと見える。これは一種の毒だ──とは、睦実の弁だ。
元々、少女は自分に興味は無い方だ。今は、少しだけ持つようにはなったが、以前は、今以上に無関心。
「普通はしないよね」
「何がだァ?」
「一緒にお風呂入るの」
ケロロたちが聞いたら卒倒するかな?──などと、ケラケラ笑う。
確かに卒倒ものだ。
それ所か、ギロロが聞けばフル装備の上にデンドロギロロの大立ち回りだろう。
「言ってみるかィ?」
「いや、俺も命は惜しい。──クルル、おいで」
体を洗い終えたクルルに、睦実が手を出す。だが、その手を叩いて少女は湯船に入った。
背中を見せるクルルに、睦実は腰に腕を回して抱き寄せる。
「なァ、真珠エキスの意味は?」
「今、そこな訳?」
小さな笑い声を上げつつ、彼女の首筋に唇を辿らせた。
反応する度に、体と共に白い湯船も波を立てる。そのまま、小さくキスを繰り返し、空いた手をクルルの胸へ持っていく。
華奢な体故に、胸の大きさは標準のもの。サイズではCくらいか。
「ん、ふっ…おぃ、んっ…」
「ほら、クルル。ここ尖ってる。──気持ちいいの?」
「クっ…んっ!」
耳に寄せて、そのまま舌で愛撫をしてやる。
胸の突起を撫でながら、腰に回してた手を下へ下げた。
声を殺している為か、羞恥の為か、あるいは白い湯の中だからか。
少女の白い肌は、薄く紅を差した様に赤くなる。
無理矢理に顔だけを自分に向かせ、睦実はクルルに口付けた。侵入する舌に、クルルは思考を遮られ、持って行かれる感覚に陥る。
「ん、んんん…ん、ふっ…」
「ここ?」
指を一本入れられた蜜壷は、一緒に湯の侵入も許してしまう。
中に入って来たものに、クルルは声を上げた。
「ひゃぁ!や、めっ…はぁ、ん」
「どうかした?」
「ぁ、んぁ、やぁ…あつ、いィ…ふぅ、ん」
「良くない?」
「…なぁ、ぁん、い…ゆがぁ、あぁん!」
掠った場所に反応し、甘い声が湿った浴室に反響する。甘過ぎる己の声に耳どころか、体の全てが反応していく。
睦実は、乳白色の湯から見えている背中に唇を這わせ、下の指を増やしながら中を広げる。広げれば広げた分、湯がクルルの中へ入り声を上げていく。
つまり、彼女にとっては悪循環。
「んぁ、やぁ!も、…ぁん、むつ、みぃ…」
「ん?何?」
「あ、ぁ、あ…もっ…ほしぃぃ」
「いいよ。上げるから、ちゃんと食べてね」
一度、入っていた指を全部引き抜き、代わりに睦実のそれを宛がう。
はっきり言えば、睦実のは通常の人間のものよりは、立派なものだ。だからか、挿入時はかなりの負担となる。
クルルが欲しがらなければ、睦実はけして最後までしないのだが。風呂の中と言う事もあり、若干期待はしていた様だ。
湯の浮力を借りて、ゆっくりと中に入れて行く。
「んぁ!クッ、ぅん…あつっ…」
「大丈夫、クルル?少し待つ?」
「やぁ…う、ごいてぇ…」
振り返り際の少女が妖艶過ぎたのか、思わず喉をならしてしまう。
同時に、入れた物も反応して体積を増す。
「ひゃん!ぁ、やぁ…お、きく…なぁ、あぁん!」
「クルルが煽るからだろ?」
白い湯が揺れる。
クルルの喘ぎ声は更に増して行き、とうとう呂律が回らなくなった。
「ふっ、んぁ、やらぁ…こわ…ん、…れるぅ…」
「いいよ。壊れて、クルル。こっち向く?」
頷くだけの返事を示せば、睦実はクルルを抱えて立ち上がる。浴槽の端に座り、体制を対面させる形にした。落ちない様に自分の首に、クルルの腕の腕を回させる。
深みに嵌まるキスをして、そのまま揺さぶれば。睦実の足元の白湯が、波を立てた。
「あ、ぁ、や…らめぇ、ィくぅ」
「イキそう?」
「ふぅぁ、ぁん、ィちゃ…」
「一緒がいい?」
「いっ、しょぉ…んぁ、ぁ、あっぁぁぁぁん!」
「くっ──」
吐き出した瞬間。クルルの体が弛緩する。
過剰の快楽と疲労、それから湯中りが原因だった。

「クぁ?」
「おはよ。と、言ってももう深夜回ってるけど」
寝ぼけながらもクルルは何かに気付き、着せられたらしきパジャマの袖から出る手首に鼻を着け、今度は睦実の首に鼻を寄せた。
「…同じ匂い…」
「そりゃ、一緒に入ったからね」
「何かイヤだ」
「そう?良いと思うけど?」
どうやら、同じ入浴剤の香りが体に染み付いたのが、気に入らない様だ。
しれっと、隣で雑誌を読んでいる睦実に、クルルは枕を投げつける。
上手く避けた睦実は、クルルに軽くキスをした。
「…盛るなよなァ」
「健全な青少年ですから」
「その青少年がな──」
「あぁぁ!ダメ!言っちゃダメ!女の子が言わないの!」
「ホントの事だろ?」
「そうだとしても言わないの。それに、ちゃんと後処理したんだから」
「…ポカリ」
「はいはい」
秘密部屋の片隅にある小型冷蔵庫から、冷えたスポーツドリンクを取り出す。それをクルルに投げ、同時に自分の分も取り出した。
「ま、責任は取るよ?」
「は?」
「だって、ほら。俺、一応芸能人だから収入あるし」
一言多い──と、言う言葉を知っているだろうか。
クルルは受け取ったスポーツドリンクを、思いっきり睦実へ投げ付けた。

少女、湯の華となれ──。

~fin~

芸能人。責任の取り方を模索中。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

『有限と微小のパン』HAL様から頂きました、素敵な艶小説です!!『裏企画』の開催を聞き、大急ぎで走りこんでしまいました。(痛い子)

「睦クル♀ 温泉の素が入ったお風呂に、一緒に入って……」という我侭なリクエストをさせて頂いたら、このような……睦実君が羨ましい!!(正直にも程がある感想です)

真珠エキスで、きっと2人ともお肌がすべすべになったのかと思うと、羨ましい限りです。何より、クルルが大好きで、ちゃっかりとおいしい思いをしている睦実君が……!何だかんだで睦実君が大好きなクルルが……!!そんなこと分かっちゃってるような睦実君が……!!!

その上、「同じお風呂に入って、同じ香りが2人に染み付いて……」という妄想を感想と一緒にお話させていただいたら、その描写を付け加えてくださって……。

HAL様、本当にありがとうございました!!

川谷も、色艶のある小説を書けるように精進していきたいと思います!(その前に、文章力自体を向上しろという話ですね……)

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『有限と微小のパン』HAL様より頂いたキリリク小説

【遊戯と呼ぶは烏滸がましい】

少女はそれでも創るだろう──。

いつからだろうかなど、おそらくは考えるだけ無駄と思う事。
いつしか奈落と呼ばれる己のラボには、居座る人数が増えた──と、クルルは思う。
ボブヘアに、愛用のヘッドホンが耳を覆っている。
傍らに置いたカップは、世話役が置いていったもの。
「うーす!ちぇーす!ちゃーす!クルルくん、お邪魔するよ」
「で?」
「うん。ねぇ、クルルくん。ヌイグルミは?」
「その辺にねぇ?」
女の子らしからぬ女の子だが、唯一大切にしているヌイグルミは、少女の後見人である総督が渡したもの。
後見人になる事を許された日。
総督は、一体のヌイグルミを小さな少女に手渡した。
初めは見向きもしていなかったが、今では愛用している──と、珍しく彼女の護衛役が話していた。
ラボの片隅に小さく座るそれは、使いふるされた様に少し傾く。綻びは見えるものの、埃は被っていない。
「この間さ、大佐と暇潰しに『ゲーム』したんだけど──」
「……」
「なんつーのかな?」
「相手にならねェ?」
「違う。つまらないだよね。ぶっちゃけさ」
「…ここでぶっちゃけんな」
「まぁ、まぁ。珈琲、もらうよ」
「アールグレイ」
「ココアなら入れるけど」
「炭酸」
「オレンジジュース」
少女に渡されたのは、スポーツドリンク。
専用の冷蔵庫に入れていたのは、彼女の護衛役だ。後見人の手には、世話役が冷蔵庫に入れたであろう緑茶。
元々あったカップの隣にスポーツドリンクを置き、小さく白い手は無機質のキーを叩き続けた。
「相手が悪かったんじゃねェ?」
「あ、違う。内容が、つまらなかっただけ。大佐が相手で、彼がつまらない訳ないじゃない」
「それもどうよ…」
幾つかの記号と数字は、形成された一つの形になろうとする。規則性の中から、幾つかの可能性が叩き出され、完成形に近付けていく。
何かを作る作業を、少女は好んでする。ただ、作る内容は可愛らしい制作者の外見と違い、物騒なものでしかないが。
実際。後見人である彼は、彼女に武器や兵器の開発を止めてもらいたいのが本音だ。しかし、立場上。それを口にする事は出来ない。
後見人になる事を許された日。
少女にヌイグルミを贈った。
別に、贖罪ではない。
「なんて言うの?取ろうとした部分を攻めると、予想した通りに動くんだよね」
言葉に覇気が無いのは、今に始まった事ではなく。逆に、近く議会があることをクルルに教えていた。
「総督」
「何?どうかした?」
「何日目だァ?俺の予測じゃァ、三日目だと思うが…」
「惜しい!四日目だけど」
「…また、大佐か…」
「そ、」
後見人は、議会前になると眠らずに仕事をこなす。
理由としては、寝不足になれば彼は容赦が無い。自分が、身内と思っている者には砕けた口調になるのだが、そうでは無い者には恐ろしく冷酷であり、その視線で射殺せる程。
毎回。彼の世話役である大佐は、議会前の数日を使い総督を寝不足にする。その後に議会に出席させ、管を巻く様な役員たちを黙殺させているのだ。
普段はごく普通の人物である事を、あまり知られてはいない。
「左右に陣を敷かれていて、正面には左右よりかは少ないけど兵がいて、後方はがら空き」
綻びたヌイグルミを手に取り、総督は懐から小さなプラスチックの箱を出す。
ラボのBGMは変わることなく、少女が奏でるタイピング音。
「クルルくんなら、どこへ部隊を逃がす?」
「あ?正面」
「だよね~」
「大佐は?」
「同じだったよ」
「…あぁ…確かにそりゃ、つまんねェなァ…」
「でしょ?」
一見。敵がいないであろう後方へ逃げがちだが、この場合は前方が正解である。
囲まれた状態で逃げ道が一つしかないのは、高い確率で罠だからだ。
「後方は、伏兵だなァ。少々の犠牲を出しても逃げるなら、前方が吉だ」
「まぁね。解りやすいって言えばそれまでだ」
「んーで?」
「笑ってしまうくらいに後方へ逃げてた」
「…確かにつまんねェ」
仕上げとばかりに、キーを叩いた。傍らに置かれたカップを口にすると、苦味よりも酸味が襲う。どうやら作業をしていた事により、入れてもらった珈琲は冷めて酸化したらしい。
溜め息を吐きながら、クルルはスポーツドリンクを手に取った。
一口飲むと座っていた椅子を回し、体を訪問者であり己の後見人である総督へ向ける。
「…なァ」
「ん?何?」
「それは?」
「ヌイグルミ」
「…アンタ、ケロン軍での役職は?」
「まぁ、総督?一応、軍──っつーか、ケロン星の最高位?」
「…その総督様が、何をしてるんだィ?」
「解れるんだね。綿が出ない様には口を締めれるけど、気になるならアップリケでも着ける?」
「リンゴでも着けるのかァ?」
「ミカンかレモンは?」
「そんな問題かァ?」
少女が呆れるのも無理はない。
目の前にいる彼女の後見人は、理由はどうあれ。現在のケロン軍の総督だ。その総督が、チクチクと細かく縫製作業。しかも、解れたヌイグルミの修理の為の針仕事。
器用である事は知ってはいたが、今更ながらに驚く──否、呆れるばかり。
「あ、服でも着せようか!」
「…チャイナ服でも着せるのかよ?」
「セーラー服とか?」
「勘弁しろよ…」
前髪が眸を隠す長さに、鬱陶し気にかき上げれば。クルルは白衣のポケットから、一本のフラッシュメモリーを彼に投げた。
すると、受け取った彼は苦笑。
『ゲーム』の意味が解ったのならば、投げ渡されたメモリーの中身も解るもの。
「それ。次の『ゲーム』で使ってみなァ」
「保証は?」
「解ってんだろ?」
「それが私の仕事だからね」
はい、直ったよ──と、修理していたヌイグルミを手渡すと、後ろ手に手を振りながら後見人は、ラボから退場する。
「…服…本気かァ?」
渡されたヌイグルミを見ながら、呟けば。何日か後には、ヌイグルミにゴスロリ服が着せられた。
『ゲーム』がつまらないと宣う声は、未だにラボから溜め息の代わりに吐き出されている。
後見人になる事を許された日。
一体のヌイグルミを贈ったのは、少女が少女である事を知ってもらう為。

やはりヌイグルミは彼女の傍ら。

~fin~

総督。針仕事をしてみる。

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『有限と微小のパン』HAL様から40000hitキリリクとして頂いた小説です。

「総督とクルル(女の子設定)のお話」というリクエストをさせていただいたのですが……総督が素敵です!クルルが可愛いです!!

総督はHAL様宅のオリジナルキャラクターさんなのですが、以前からずっと大好きなキャラクターさんでして。ユーモアがあるお茶目な総督を思わず『師匠』として仰ぎたいと思っていたりします。

親子にも友人にもなれる、総督とクルルの関係性に、Prost!

HAL様、ワガママなリクエストに応えてくださり本当にありがとうございました!!

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『ハイカラ』ほたるび様から頂いた相互記念イラスト!

ファイル 7-1.jpg

な、何と……恐れ多くも、『ハイカラ』ほたるび様から(ちゃっかりと)頂いてしまった相互記念イラストです……!

『ドロクル(女の子設定で擬人化)とタママ』という、曖昧というよりも人物しか言っていない痛々しいリクエストで、このようなほんわかとあたたかいイラストが頂けるなど……。お迎えするなんてずうずうしいことこの上ないのですが、お言葉に甘えてしまいました。

ほたるび様、この度は本当にありがとうございました!

―――そして。

見惚れている内に、どうしてもこの素敵なワンシーンの小話を書きたくなってしまい……勝手ながら、久方ぶりの小話として下に掲載させていただきたく……!

ほたるび様の擬人化設定が……その容姿が素敵で、彼等をイメージしつつ書かせていただきたくなってしまいまして……。調子に乗るのもいい加減にしろという話ですね、申し訳ありません!

ほたるび様限定で、苦情――もしよろしければ、そっとOKをいただけたら――をお受けいたします。

それでは。

『near…』

「湯気が雲みたいですぅ~」

 ほかほかのあんまんを食べながら、タママ君が嬉しそうに報告をする。微笑ましいな、と思うのは、自分が随分年上だからなのか。

 同じように、白い湯気を吐く豚まんを齧ると、同じくカレーまんを食べる彼女と目があった。長い前髪と眼鏡で彼女の瞳は隠れているのだが、おそらく視線は自分の方に向けられているのだと思う。

 変な意味じゃない。それでも、やっぱり大切なひとに見られているとなると、緊張する。

「どうしたの?」

 沈黙を誤魔化したくて思い切って尋ねると、寒いのか少し青くなった唇が、キレイに弧を描いた。

 

 雲の無い空に、視力の弱い自分の目にも映るほど星が散らばっている。漆黒とは言い切れない、少し青みが掛かったそこに、まんじゅうの湯気が吸い込まれていく。

「湯気が雲みたいですぅ~」

 隣に座っているガキが、そんなことを言った。上手いことを言ったと自画自賛をしているのか、馬鹿みたいに笑っている。横目でチラリと反対隣を窺うと、女みたいに微笑む先輩が、いた。

 子どもらしいと、和んでいるのだろうか。

 自分は生憎、そんな感情や感性をとうの昔に壊してきたのだが、この両隣の存在たちには強くそれが残っているらしい。そのことに対して抱くこの感情は、感傷になるのだろうか……?

「どうしたの?」

 ふと、先輩の声が響く。

 声を聞くと、ようやくこの人も男なんだと分かるのだ。

 しかしまあ、たった今自分が思っていたことなど言うつもりは全く無いので、ニヤリと口の端を持ち上げて別の言葉を紡ぎ出した。

「アンタとピンクって、違和感ねぇ~な」

 その言葉で、ぐしゃりと先輩の表情が歪む。泣き出す一歩手前のその顔を見て、あの妙な気持ちは奥深くに沈み込んだ。

 

 僕は、あんまん。

 クルル先輩は、カレーまん。

 ドロロ先輩は、なかなか決まらなかったから、僕とクルル先輩で選んだ。ピンク色の豚の形をした、豚まん。

 かわいいけど、考え方によっては残酷な形。

 食べるペースもバラバラで、僕は半分位食べたのに、クルル先輩は2口くらい、ドロロ先輩なんてようやく1口齧ったばかりだ。最初に食べ終わってしまうのが嫌でちょっと休憩していると、いつの間にか2人は2人の空間に入りかけている。

「どうしたの?」

「アンタとピンクって、違和感ねぇ~な」

「えぇ!?」

 まんじゅうを買う時にも、こうやって彼女はこの人を弄っていた。そしてやっぱり、こんな風に動揺していたのだ。

(――何か、何年経っても蜜月っていう言葉みたいですぅ……)

 付き合い始めたばかりという訳でもないはずなのだが……。

 ふと、そんなことを思ったけれど、後が怖いので黙ったままあんまんを齧る。寒いから、だいぶあんまんは冷めてしまっていたけれど、甘さだけは変わらなかった。

 

 《終わり》

とある夜に空の下で。

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『有限と微小のパン』HAL様より頂いた相互記念小説

【確率的感情数値】

(クルル女体化中)




変わる事は無いと思う日常──。


ダイニングテーブルに並べられるのは、盛り付けされた食事。
平日の昼過ぎ。日向家には、家主の秋と科学者の少女。
にこにこと笑みを見せる秋に、クルルは溜め息を吐きたくなった。


事の始まりは、仕事終了時。
ラボにて、どこかのボンクラ隊長が溜め込んだ書類を片付け終えると、お気に入りの不快満載なインターホンが鳴った。
「何か用かィ?」
『クルちゃん。お仕事終わったんでしょ?お昼にしない?』
「…クッ…解った」
別に仕事をしていると言った訳でもなければ、終わったと宣言した訳でも無い。しかし、日向秋は、それらが解るのか。察したかの様に、科学者を誘いに来たのだ。
メインディスプレイをスリープモードに切り換え、ラボ内の機器は必要最低限に抑える。
ゲートを開ければ、笑顔の秋。
色々と言いたい事があるのだが、彼女の笑顔の前では、全てが無力化されるらしかった。
「お昼にね、ドルバケバブ作ってみたの」
「ククッ。相変わらず凝り性だねェ~」
どんな嫌味を言った所で秋には敵わない事を、科学者の少女は、骨の髄まで知っていたのかもしれない。
かくして、昼過ぎの日向家ダイニングテーブルにて、食事と相成った。


「しかし、何だってドルバケバブなんて作ったんだァ?」
それも大量に──。
クルルの言う事も最もだ。テーブルに置かれたバスケットには、溢れんばかりのドルバケバブ。
並べられ、積み重ねられたそれは、ちょっとしたバランスゲーム。
「違うのよ。ケロちゃんやギロちゃんも、居るかと思ったんだけど…」
「あぁ~。隊長たちなら、タママんとこへ行ったぜェ」
「あら、そうだったの」
大量の事務仕事を科学者に押し付けた隊長は、怒り浸透な赤い髪の戦士に追い掛けられながら、西澤邸に出掛けていた。勿論、タダで請け負う筈も無い彼女の事。
後日。緑髪の小隊長が泣きを見るのは、また別の話。
腹は減っていても、大量とも言えるドルバケバブは、かなりキツイ。とにかく腹に重いのだ。
味は悪く無い。難点は、量が多い事か。
学校から帰って来る夏美や冬樹も、一つが限度だろう。下手をしたら、夕飯になってしまう。
滅多に家に居る事が無い秋は、埋め合わせの如く夕飯を作る。
少しでも子供の喜ぶ顔が見たい──と、言うのが、理由の様だ。
それがどう言うものかが、少女には解らない。
後見人は居るが、両親は居ないのだから解る訳がない。
「夕飯も作るんだろ?」
「そうよ。何にしようかしら?」
「その前に、このケバブ何とかしろよ…」
「どうしようかしら…」
半分も減っていないバスケットに、秋は少し困り顔。
作ったのは秋なのだが、どうにもその表情は似合わなかった。
科学者の秋に対する印象は、とにかくダイナマイト。やることなすこと、どれもが規格外。
今まで、何人か規格外な者たちを見て来たクルルも、秋には驚いた。それこそ、自分の後見人は可愛い方かと。それでも、並べればカテゴリーが違うのだが。
科学者は、小さく溜め息を吐く。
「秋、これ。二つくれ」
「どうするの?」
「…アイツに持ってく…」
苦肉の策──と、までは言わないが、それでも無惨に捨てられるよりはマシだろう。
理由が解った秋は、笑顔にドルバケバブを二つ。クッキングペーパーに包み、紙袋に入れた。
渡されたものを持ち、出掛けようとする科学者に、待った──を、掛ける秋。
立ち上がったクルルを座らせ、櫛を持ち出す。
「クルちゃん、女の子なんだから綺麗にしなきゃ」
「ク?そう言や、今日はモアの奴。弄って行かなかったな…」
ストレートの金に近い髪は、白衣に散っている。
いつもならば、助手の玩具の髪だが、今は秋の玩具だ。
綺麗に鋤いて、サイドにドライヤーで軽くカールさせる。
ついでとばかりに、服まで持ち出した。
「俺は着せ替え人形かよ…」
「ほら、クルちゃんってパンツルックばかりでしょ?たまには、スカート穿いた方が良いわよ?」
ケロちゃんたちも居ない事だし──と、何とも内情を理解した言い方。
少女を除く小隊全員が断固拒否するのが、スカートで外出する事。最近では、幼馴染み三人の過保護指数が、急激に上がって来ていたりする。
「たまには、お洒落しなきゃ」
「…勝手にしてくれ…」
ワインレッドのネックシャツに合わせのカーディガン。下は黒のミニスカート。チェック柄のハーフコートを合わせられた。
ソックスは紺に、ショートブーツは黒。
「行ってらっしゃい。睦実くんにヨロシクね」
「クッ!…行ってき…ます」
見送った秋は、小さく笑いながらも天井に視線を向けた。
「ドロちゃん。追い掛けちゃダメよ?」
『……』


「凄いね。流石、秋さん!」
「俺も驚いたぜェ」
科学者が持って来たドルバケバブを食べながら、睦実はこれまでの経緯を聞いていた。
突然、マンションを訪れた相棒の格好に驚いたのが、素直な感想だ。しかし、スカート姿で街を歩かせたく無いと思うケロロたちが、許すとは思えない。
理由を訊いて、やっと納得した。
秋ならやりかねないし、誰も文句は言えないだろう。
「ま、お陰で俺は得したけどさ」
「そんなもんかァ?」
「なら、今日泊まる?」
「却下。多分また、秋の奴が大量に作る筈だから」
「残念」
入れてもらったアールグレイに口をつけながら、ある考えが過る。
ちらり──と、視線を向ければ、睦実は苦笑してみせた。
「俺も、まだ死にたくは無いから…さ」
「あぁ、確かに」
それは懸命な判断だろう。


血の雨が降る確率100%──。















~fin~

編集者、曹長にお洒落させる。



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『有限と微小のパン』HAL様から恐れ多くも頂いてしまった相互記念小説です!

「睦クル(女の子設定)前提で秋ママとクルルのお話」というアバウトなリクエストが……!

秋ママが「お母さん」をしていることや、クルルの気遣い。睦実君の「得した」発言が、川谷のストライクでした、特に!!(さり気無く、釘を刺された天井ドロロも好きです)

クルルがおしゃれをする(させられる)部分の描写が、全身分されていることに感動を覚えました。細かいその描写に、本当に憧れます……。

HAL様、思わず何度も読み返してしまう素敵な小説をありがとうございました!

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